14年の高松宮記念を制したコパノリチャードは3年前に種牡馬を引退し、14歳になった現在は北海道で乗馬として過ごしている。荒々しさもあった気性は、去勢を機に一変。黙々と仕事をこなし、子供からお年寄りまで多くの来場者を楽しませている。坂本達洋記者が実際にまたがり、かつての快速G1馬の様子をリポートした。
かつてのG1馬は元気いっぱいに“第三の馬生”を送っている。14年の高松宮記念など重賞4勝を挙げたコパノリチャードは現在、北海道・新冠町の「にいかっぷホロシリ乗馬クラブ」で、誰でも楽しめる乗馬の魅力を伝えている。種牡馬を引退した21年の7月に、同クラブへ縁あってやって来た。
当初から関わっているスタッフの吉田真理さんは「(前向きな)ダイワメジャー産駒でこっちは構えていましたが、うるさい感じはなかったです。去勢後に(種牡馬としてけい養されていた)レックススタッドの方が訪ねてきて『こんなにおとなしくなるの?』とビックリしていました」と笑う。現役時代は折り合いに苦労するなど激しい気性だったそうだが、乗馬向きな賢い性格も手伝って、文字通り“一歩一歩”成長して我慢できるようになっていったという。
せっかくだからと記者も乗馬体験をさせてもらい、G1馬の乗り味を堪能した。およそ減量騎手2人分の重たい“初心者”をものともせず、落ち着いた雰囲気で室内馬場を何度も周回。馬上にいる間、記者が怖いと感じる瞬間は全くなかった。
「小さなお子様も、お年寄りの方でも乗れますし、ファンの方が乗りに来ることは多いです。ここにいることを知らないで、驚かれる方もいます」と吉田さん。勝った高松宮記念で鞍上のMデムーロが披露した“飛行機ポーズ”をマネしてもいいか、と聞かれることも多いそうだ。
今は昼夜放牧で朝の8時30分頃に集牧して、多い日は5、6人のお客さんを乗せ、仕事が終わると再び放牧地へ戻る日々。普段の様子について吉田さんは「賢いけれどマイペースですね。食いしん坊で食べ物を持っていくと、すぐに顔を出して『ちょうだい』ってきます」と、意外な素顔を教えてくれた。ターフを去って月日は流れたが、今も人々を魅了し続けている。(坂本 達洋)
コパノリチャード 父ダイワメジャー、母ヒガシリンクス(父トニービン)。2010年4月15日、北海道日高町・ヤナガワ牧場生まれのセン14歳。栗東・宮徹厩舎から12年11月に京都・芝1400メートルでデビュー。13年アーリントンCで重賞初勝利を果たし、14年高松宮記念でG1初制覇。15年の京阪杯(14着)がラストラン。通算成績は22戦6勝(うち地方1戦0勝)。重賞4勝。総獲得賞金は3億450万7000円(うち地方0円)。馬主は小林祥晃氏。現役引退後に種牡馬となり、21年シーズンを最後に乗馬となった。同期にキズナ、エピファネイアなど。
◆にいかっぷホロシリ乗馬クラブ 1992年4月に地域の乗馬、スポーツ振興や町内の観光拠点を主な目的として設立。現在は新冠乗馬スポーツ少年団の預託馬も含めて22頭が活躍している。過去に98年の帝王賞、東京大賞典を制するなど97、98年のNARグランプリ年度代表馬に輝いたアブクマポーロや、98年のオールカマーなど重賞5勝を挙げたダイワテキサス、95年の帝王賞などを制して同年のJRA最優秀ダートホースに輝いたライブリマウントなどが所属した。所在地は北海道新冠郡新冠町字西泊津26番地。