現役時代に屈指の人気を誇ったアフリカンゴールド(セン9歳)は、今年の京都記念10着を最後に阪神競馬場の誘導馬に転身した。引退からわずか2か月で“デビュー”を果たし、変わらず多くのファンを魅了した。
アフリカンゴールドの人気ぶりには、担当者も驚きを隠さなかった。阪神競馬場の業務課主査で、乗馬普及係を務める飯田祐一さんは笑いながら振り返る。「誘導の度にファンの方がぞろぞろついてきていました。今までにないことで、人気ある馬が入ってきたなと思いました」
旧ツイッター時代から自らのXのアカウントを持ち、フォロワー数は4万人超。JRAの「アイドルホースオーディション2023」でファン投票1位となり、ぬいぐるみにもなった。22年京都記念を勝ち、今年2月11日の同レースを最後に引退。わずか2か月後の4月6日、阪神競馬場の誘導馬として第二の馬生をスタートさせた。
パドックから馬場へ出走馬を先導するのが主な仕事。速く走ることを強いられてきた競走馬を、普段からゆっくり歩くように再調教するのは簡単ではない。だが、飯田さんは言う。「乗っている感じでは、これならいけるんじゃないかと。阪神開催がしばらくない(今年4月20日から25年春までスタンドリフレッシュ工事中)こともあり、一度試してみようと思いました」
誘導初日はどこかそわそわして落ち着かない様子だったというが、1週間後にはしっかりと後方の誘導業務をこなし、栗毛の馬体を輝かせていた。「最初の2レースは全然落ち着きがなくて大変でしたが、3レースからは常歩(なみあし)で入場できました」。
そもそも、阪神競馬場の乗馬センターの馬房に空きがあり、栗東トレセンから直接移動できたという幸運もあったが、学習能力や順応性が高く、堂々のスピードデビューとなった。開催がない今も、飯田さんと毎日乗馬のトレーニングに臨む鍛錬の日々。「いずれはRRC(引退競走馬杯=引退競走馬による乗馬の競技大会)を目指していきたいですね」と新たなタイトルを狙う。
「誘導馬は傾斜のある地下馬道を一日に何度も往復して、しかもずっと常歩。非常に大変な仕事ですよ」と飯田さん。安全に競馬を行うためにも、絶対に必要な仕事。写真を撮る際に動かず、ポーズを決めるアフリカンゴールドは、一流の誘導馬のオーラを漂わせていた。(山下 優)
アフリカンゴールド 父ステイゴールド、母ブリクセン(父ゴーンウエスト)。セン馬の9歳。現役時代は栗東・西園正都厩舎に所属。重賞は12番人気で逃げ切った22年の京都記念の1勝。北海道日高町・ダーレージャパンファーム生産。40戦5勝。総獲得賞金は1億8664万8000円。馬主はゴドルフィン。「アフゴ」の愛称でファンに愛された。