海外を含めて2歳G1ウィナーは、種牡馬となった時の価値は高い。根幹距離とされるマイル戦で、好時計勝ちとなれば、さらに資質の高さが評価される。種馬場とすれば、2歳でG1を制した馬の動向は注視し、種牡馬として迎え入れる態勢を整えるだろう。先週の朝日杯フューチュリティSは、未勝利を勝ったばかりのアドマイヤズームが優勝したが、モーリス×ハーツクライの配合を考えると、3歳以降のさらなる活躍が期待できる。
2歳戦では、ディープインパクトが初年度産駒がデビューした10年から21年までの12年間で、11回のリーディングを獲得。2歳G1・8勝など、ディープ産駒は2歳重賞での強さが際立っていた。同じタイミングで種牡馬入りしたハーツクライの朝日杯フューチュリティS優勝馬は、サリオスとドウデュースの2頭。ホープフルSがG1となった17年にタイムフライヤーが優勝するなど、2歳G1馬は3頭のみ。2歳リーディングは、3位(14年、16年、17年、19年)が最高と、ライバルとは開きがあった。
しかし、サリオスとドウデュースの共通点は、無敗で2歳マイル王に輝いたこと。サリオスの母の父は、凱旋門賞などを制したデインドリームなどを輩出したロミタス。ロミタスは、チャンピオンディスタンスでG1・3勝の戦績から、サリオスが朝日杯フューチュリティSを制したことに驚きはあった。一方、ドウデュースの母の父は、4戦4勝でBCジュヴェナイルを制したヴィンディケーション。BCジュヴェナイルは9ハロンだが、好スタートを切って堂々逃げ切り勝ち。デビューから2戦は、6ハロンで勝利したことを含め、快速で知られた。
2頭の母系は距離適性に違いはあれど、体形は比較的、胴が詰まった体系で腹袋もある。サリオスを遡ればデインヒルの名が、ドウデュースの母系はゴーンウェストがそれぞれ、ボリューム感を伝えている印象を受ける。以前、種牡馬の話題で社台スタリオンステーションの徳武英介場長に伺った時、「ハーツクライがダービーで2着に追い込んだとはいえ、この頃でも成長途上だったことから、産駒も本格化が遅いイメージを強く持たれていたと思います。そのウィークポイントを補う形で、スピードタイプの骨格の良い馬や、仕上がりの早い配合が増えたことで、徐々に2歳戦での活躍が目立ってきたと思います」と話されていたことがある。ドウデュースはまさに、その最高傑作と言える。
3歳以降のドウデュースは王道を歩み、日本ダービー、有馬記念、天皇賞・秋、そしてジャパンCと、芝中距離のG1を4勝した。スピードが追求される日本の競馬で、朝日杯フューチュリティSも優勝している点は、種牡馬となった時の評価をさらに高めることとなる。有馬記念連覇で有終の美を飾って、北海道へ戻ってきて欲しい。(競馬ライター)