◆第69回有馬記念・G1(12月22日、中山・芝2500メートル)
その存在自体が奇跡を予感させる。非常に珍しい白毛馬として史上初めて有馬記念に挑むハヤヤッコは、秘める意外性で一発ムードを漂わせる。国枝調教師は「エポックメイキングなことをやってくれないかな。夢のあるドリーム競馬だからね」と、脳裏には様々な記憶が駆け巡った。
デビュー2戦目で芝で初勝利を挙げたが、同4戦目からダート色の濃い母系の血統面を考慮してダート路線へかじを切った。3歳時、砂のレパードSで重賞初勝利を飾り、その後は6歳3月の日経賞で再び芝に戻すと0秒4差の5着に健闘。「ダートで結局はもうひとつだから手を打ったんだけど、そうしたら芝でもできると分かったんだよね」と指揮官。その後は重馬場の函館記念を制するなど、しぶとさや持久力を武器に戦ってきたが、その2年後に再びイメージを覆されることになる。
前走のアルゼンチン共和国杯は10番人気ながら、直線で大外から豪快に追い込んで激走V。おまけに良馬場で2分29秒0の好時計を叩き出し、速い時計勝負に対応した驚きの内容だった。トレーナーは「こんなのは初めて。あれは不思議だよね。出して行って、ある程度の位置と思っていたら、(前半で)動かなかったのに、そうしたら直線で手応えいいぞ!? って(笑)」と、苦笑いを浮かべるほどだった。
国枝師にとって思い出の有馬記念は、9番人気のマツリダゴッホで勝利した07年だ。一方で19年は断然人気のアーモンドアイで9着に敗れて、“天国と地獄”を味わった。「マツリダゴッホは抜群に状態が良くて自信はあったんだけど、あれはすべてがうまくいったよな。(ハヤヤッコは)楽しませる馬だよね。もう一回あるかな」。何が起こるか分からない暮れの大一番で、想像を超えた走りを見せる。(坂本 達洋)