◆第64回有馬記念・G1(12月22日、中山・芝2500メートル)
第64回有馬記念・G1(22日、中山)でグランプリ初制覇に挑むのが、3歳牡馬サートゥルナーリアに騎乗するクリストフ・スミヨン騎手(38)=ベルギー=。過去2度の騎乗は2、5着と掲示板を外しておらず、今年こそはと力が入っている。そんな名手を内尾篤嗣記者が直撃。パートナーの現状や手応え、アーモンドアイへのリベンジの思いを聞いた。
―サートゥルナーリアと初コンビとなった前走の天皇賞・秋(6着)を振り返ってください。
「調教で乗って、すごみを感じていました。今までいろんないい馬に乗ってきたので、どんな馬がすごいのかは分かっています。でも、レースに行くとテンションが高くなり、コントロールが利きませんでした。今回は冷静さを保って臨めるかが重要になります」
―11日に1週前追い切りに騎乗。栗東・CWコースの3頭併せで最後方から追いかけ、内から鋭く伸びて1馬身先着。6ハロン86秒1―11秒3でした。印象は?
「引き続き、非常にいい状態です。もう少しパートナー(併走馬)が速く行っても、とらえられたと思います。そう思えるくらい、いい動きでした」
―天皇賞を勝ったアーモンドアイと再び対決します。
「アーモンドアイは日本のベストホース。香港から目標を切り替え、強力なライバルが現れました。でも、サートゥルは前回ずっと力んで、力を出し切っての敗戦ではありません。調教通りのパフォーマンスができれば、彼女に対抗できていいと思います」
―スミヨン騎手は有馬記念に2回乗っています。10年はブエナビスタで2着、12年はスカイディグニティで5着【注1】。コースの印象などは?
「中山競馬場の2500メートルは、とてもトリッキーです。枠でレースの組み立てが変わるし、スタートも非常に大事。何が起こっても不思議のない舞台で、それだけに面白いと思います。非常にたくさんの人が来て、お祭りのような独特な雰囲気ですね。売り上げが世界一のようですし、そんなレースに参加できるのは喜ばしいことです」
―この秋はラッキーライラックでエリザベス女王杯、アドマイヤマーズで香港マイルを制覇。日本馬のすごい部分は?
「日本の馬は香港だけではなく世界各国で活躍して、本当にレベルが高いと思います。私が勝たせていただいた馬に関しては、生産したノーザンファームの方々の技術の証明でもあります」
―この秋は減量に苦労せず、コンディションがいいと聞いています。
「年齢を重ねて、体重をコントロールできるようになりました。今は肉を食べず、野菜中心の食生活ですが、筋肉は以前よりも上。騎手としてのパフォーマンスは今が一番いいと思います」
―7年ぶりの短期免許ですが、今後も日本で騎乗したいですか?
「もちろん。来年も日本に来ることを考えています。ただ、アガ・カーン殿下【注2】との専属契約があり、あまり先のことを言えないんです。すみません」
―最後に意気込みを。
「勝ったときの内容、僕が乗った感触を総合すると、サートゥルナーリアが一番強い。有馬記念を勝てたら来年、凱旋門賞に行ってもいいと思うぐらいの手応えを調教で感じています。調教通りならチャンスは必然と出てくるので、応援をよろしくお願いします」
【注1】10年の名牝ブエナビスタは、単勝1・7倍の圧倒的1番人気だったが2着。先に抜け出したヴィクトワールピサをめがけて追い込むも、6分に及ぶ写真判定の末、2センチ届かなかった。12年は菊花賞2着の3歳牡馬スカイディグニティで5着。7番人気で掲示板を確保したが、同じ3歳のゴールドシップ(1着)などに伸び負けする形となった。
【注2】イスラム教イスマイル派の指導者で、世界有数のオーナーブリーダーとして知られる。アイルランド、フランスに拠点となる牧場を置き、生産活動を行っている。フランス競馬での主戦はスミヨン。凱旋門賞はアキイダ(82年)、シンダー(00年)、ダラカニ(03年)、ザルカヴァ(08年)の4頭が勝利。