【北九州記念】ヨカヨカが熊本産初の重賞制覇 51キロで挑んだ幸騎手は亡き師匠・谷八郎元調教師にささげる勝利

大外から差し切ったヨカヨカ(手前)。内ラチ沿いで粘るモズスーパーフレア(奥)をゴール手前でかわした
大外から差し切ったヨカヨカ(手前)。内ラチ沿いで粘るモズスーパーフレア(奥)をゴール手前でかわした

◆第56回北九州記念・G3(8月22日・芝1200メートル・小倉競馬場、稍重)

 サマースプリントシリーズ第4戦の北九州記念(22日、小倉)は、5番人気のヨカヨカが熊本産馬として初の重賞制覇を飾った。鞍上の幸英明騎手(45)=栗東・フリー=は、過酷な減量を強いられる斤量51キロと雨による外枠有利の馬場を味方に古馬を一蹴。3歳牝馬を初タイトルに導くとともに、亡き師匠の谷八郎元調教師にささげる勝利となった。

 レース直前から土砂降りになった空模様が運命を変えた。外枠に入ったヨカヨカと幸は終始、傷みが少ない外を選択。最後の直線は内ラチ沿いで逃げ粘るモズスーパーフレアとはかなり離れた大外から徐々に加速する。残り150メートルで手前を替えるともうひと伸び。「本当に最後は無我夢中でした」という鞍上の激励に応えた熊本の星が、待望のゴールへ真っ先に飛び込んだ。

 熊本産馬にとって初めてのJRA重賞勝利だが、幸にとっても忘れられない金星になった。94年3月に谷八郎厩舎から騎手デビュー。ヨカヨカは息子である谷潔厩舎所属で「初めて潔先生の馬でJRA重賞を勝てました」と鞍上は喜んだ。

 しかも、昨年亡くなった八郎元調教師の一周忌が、先週の栗東で“決起集会”のような形となって催されたばかりだった。「師匠も力を貸してくれたと思います」。普段はクールな男の言葉に熱がこもる。谷調教師も目に涙を浮かべながら、「こういうこともあるんですね…。感無量という言葉しかない」と絞り出した。

 鞍上にとっては決意の減量でもあった。51キロでの騎乗は19年9月以来の約2年ぶり。それ以前は07年まで遡る。「土曜の夜の食事を少し我慢したぐらいで、思ったより大丈夫でした」と笑うが、かんかん照りに晴れていたら(人間の)スタミナも奪われるだけに、「昨日からの(曇り空の)天候も良かったです」と本音も吐露。「人馬」に天候が味方した。

 次走は未定だが、「最終的にはスプリンターズS(10月3日、中山)になるかな」とトレーナーは目標について触れた。有観客の場内からも歓声を受けた熊本産の根性娘が、さらに大きなステージへ飛び立とうとしている。(玉木 宏征)

 ◆ヨカヨカ 父スクワートルスクワート、母ハニーダンサー(父デインヒルダンサー)。栗東・谷潔厩舎所属の牝3歳。熊本県・本田土寿牧場の生産。通算10戦4勝。総収得賞金は1億2711万4000円。重賞初勝利。馬主は岡浩二氏。

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