競馬の力を再確認 コロナ禍で経験した香港国際競走 

香港で取材する松末守司記者
香港で取材する松末守司記者

 約4年ぶりとなる海外出張で香港に行った。もちろん、香港国際競走の取材のためだが、コロナ禍で到着から毎日のPCR検査はもちろん、3日間の隔離生活(競馬場取材は可能)。「With コロナ」を推し進め始めた日本とは違うストレスを感じながらの出張だった。

 取材中でも、基本関係者との接触は禁止など、厳しい制限がかけられていたが、これはすべては競馬を円滑に進めるため。前に出る一歩だと思えば仕方ない。とはいえ、口から出るのは不満ばかり。自分の小ささを実感する取材でもあったが、それを吹き飛ばしてくれたのが、やっぱり日本から参戦した14頭とその関係者たちだ。

 同じような制限、いや、それ以上のルールを強いられているはずだが、まさに泰然自若。制限のあるなかでも声をかけると、マスコミがいるエリアまで駆けつけ、取材に対応していただいた。普段と変わらない姿に力をもらったし、何かホッとさせられた。レースでは香港ヴァーズでウインマリリンの勝利が唯一の日本の勝利だったとはいえ、誇りをかけて戦う姿に、掛け値なしに感動をもらったのは言うまでもない。

 スポーツ記者時代も、五輪、世界選手権、W杯、ゴルフのPGAツアーなど、何度も海外取材に出向いた。取材を重ねた選手たちが、日本代表として世界のスタート地点に立ち、競技人生のすべてをかけて戦う姿に、何度も心が奮い立ち、生きてく勇気を与えられたことを思い出した。これこそが競馬、スポーツの持つ力だろうと思う。

 サッカーW杯の日本代表の挑戦は記憶に新しいが、11年の東日本大震災から半月後の3月26日にヴィクトワールピサが日本馬で初めてドバイワールドCを制し、復興への勇気につながったことは今も忘れられない記憶だ。

 新型コロナウィルスのまん延により、世界に憂いが広がり、閉塞感と漠然とした不安を抱える生活も約3年が経った。「With コロナ」を掲げ、いろんな場面で制限が緩和されてきたとはいえ、失ったものの多さも含め、心のどこかにある言いしれぬ不安はぬぐい去れないで居るのが正直なところ。

 そんななか、世界で戦う姿が、どれだけ人の心を救い上げてくれただろうか。香港スプリントに挑戦したナランフレグの鞍上、丸田恭介騎手が言った。「また、必ず挑戦したい」。勝負師たちの飽くなき戦いが、いつも勇気と希望を与えてくれれる。競馬の、スポーツの力を再確認した出張となった。(中央競馬担当・松末 守司)

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