◆第63回きさらぎ賞・G3(2月5日、中京・芝2000メートル)
21年セレクトセールで3億円の値がついたオープンファイアが、第63回きさらぎ賞・G3(2月5日、中京)で重賞初制覇に挑戦する。父は2011年から12年連続でクラシックホースを輩出したディープインパクト。わずか6頭となった偉大な種牡馬の最終産駒として、ここでクラシックへの道を切り開く。
未完成だからこそ、素質の高さは計り知れない。オープンファイアは過去2戦ともに後方から追走。勝負どころで早々と手は動きながら、直線は追えば追うほど雄大なフォームで伸びた。昨年9月の新馬戦は大外から豪快に差し切り、続く10月のアイビーSは猛追及ばず3着だったが、ともに上がり3ハロンは33秒台前半。斉藤崇調教師は「現状の良さは最後の切れ味ですが、そこにつながるまでがまだ弱い。これからだと思います」と評する。
指揮官が魅力を感じる「切れ味」の源は、もちろん父ディープインパクトの血だ。19年に死んだが、種牡馬としてはいまだに日本競馬界の中枢にいる。昨秋の菊花賞ではアスクビクターモアが初年度産駒から12世代連続のクラシック制覇を達成。父サンデーサイレンスの最多勝記録を塗り替える通算24勝目を挙げた。
オープンファイアは日本に6頭しかいないラストクロップの一頭。21年のセレクトセール1歳でも3億円の最高値がついた注目馬だけに、大切に育てられてきた。デビュー戦から適度な間隔を空け、成長を促しながらの起用。この中間は2週連続で新コンビのムルザバエフが感触を確かめた。トレーナーは「ジョッキーも『先週より良くなっている』と。順調に上がってきている感じです」と、上昇を感じ取っている。
6頭の中から牝馬ではライトクオンタムがシンザン記念を制し、新星に名乗りを上げた。しかし、父が無敗3冠ロードを歩んだ牡馬クラシック戦線には、まだ有力馬が浮上していない。「最後にいい脚を使うのはディープインパクトっぽいですね。少しずつ良くなればと思うし、まだまだ良くなります」と斉藤崇師。初タイトルを飛躍の春へつなげ、偉大な父の“最終章”を彩る。(山本 武志)