【天皇賞・春】カラ馬“2着”から1年、シルヴァーソニック「無尽蔵のスタミナ」は父オルフェーヴル譲り

進化した姿で戻ってきたシルヴァーソニック
進化した姿で戻ってきたシルヴァーソニック

◆第167回天皇賞(春)・G1(4月30日、京都・芝3200メートル)

 進化した姿で帰ってきた。昨年の天皇賞・春。発馬でつまずいたシルヴァーソニックは川田が落馬した後も3200メートルを走り続け、ゴール板を駆け抜けた後に外ラチを飛び越えるように転倒した。芦毛の馬体は横たわったまま、ピクリとも動かない。最悪の事態も考えられる状況の中、人が駆け寄ると何事もなかったかのように立ち上がった。

 「脳しんとうみたいな感じでした。起き出した時は無事でよかった。いや、生きててよかった。それだけでしたね」と池江調教師。そして、当時は想像もつかないような本格化は突然やってくる。7か月ぶりの実戦だったステイヤーズSを勝つと、海外初挑戦だったサウジアラビアのレッドシーターフHも連勝した。「やはり、オルフェーヴルの無尽蔵かなと思えるスタミナじゃないですか」

 自ら手がけた3冠馬との軌跡で忘れられない記憶がある。驚異の末脚で一度は完全に抜け出しながらも、2着と惜敗した12年凱旋門賞のゴール直後。勝ったソレミアをたたえるために近づこうとしたが、すぐにスッと追い抜き、そのまま止まらなかったのだ。「驚きました。あの馬場であれだけの脚を使って、バテたわけじゃないとは…」と懐かしそうに振り返る。

 マルシュロレーヌやウシュバテソーロが世界のビッグレースを制し、かつての愛馬は今や旬の種牡馬になった。その血を受け継ぐシルヴァーソニックの好走を期待しつつ、池江師にはさらに強い思いがある。「とにかく無事にスタートを切って、完走してほしい。まずは、そこですよね」。2年越しの“忘れ物”を手にするための戦いがもうすぐ始まる。(山本 武志)

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