◆中京記念追い切り(19日・栗東トレセン)
サマーマイルシリーズ第2戦、第71回中京記念・G3(23日、中京)の追い切りが19日、栗東トレセンで行われた。昨年のNHKマイルC覇者ダノンスコーピオン は坂路で55秒9―11秒9。不振脱却へ、中間はしまい重点の調整で瞬発力を強化してきた。
一瞬でスイッチが入った。栗東・坂路のラスト1ハロン。ダノンスコーピオンは手綱を軽く動かされただけで前肢の回転が速くなり、パワフルな走りへと変わる。最後の急勾配でもフォームのバランスは乱れず、真っすぐに勢いよく11秒9をマークして駆け上がった。「今週は素軽さが出てきました」と騎乗した安田助手は納得の表情だ。
一から立て直した。春2戦は完敗を喫したG1馬の異例とも言えるハンデG3への参戦。前走から約1か月半も間隔がありながら、在厩調整を選択した。目的は弱点の右後肢を強化するため。毎週日曜日に30センチほどの長針を後肢の筋肉に打ち、人間で言う鍼(はり)治療を行った。さらに常にしまい重点を意識した坂路調教でラスト1ハロン11秒台は実に6回目。「最後の瞬発力をつけたいんです」と安田隆調教師は説明する。
坂路の最終追い切りで12秒を切ったのは過去に一度しかない。それが昨春のアーリントンC(55秒1―11秒7)。同じように前走の共同通信杯(7着)後、2か月の在厩と時間をかけた調整で重賞初制覇を果たした。「11秒台を出している時は、いい競馬をしているんです」と安田助手。日に日に手応えが深まっている。
栗東も猛暑が続く。最強スプリンターだった父ロードカナロアは暑さにだけは弱く、9月上旬で暑さが残るセントウルSは2年連続で2着と取りこぼした。ただ、父子を知る安田隆調教師は「この馬はカナロアの子供なのにカイバはよく食べるし、本当に元気なんですよ」と違いを強調。「59キロを背負っていても、今回は走ってくれないと困るというぐらいの気持ちです」と表情を引き締めた。復活へ様々な手は尽くした。あとは勝利という結果を出すだけだ。(山本 武志)