【凱旋門賞能力分析】エースインパクト、フクム、コンティニュアスの敵はジンクスか

ウエストオーバー
ウエストオーバー

 G1凱旋門賞が10月1日に迫った。好メンバーがそろった印象で、さっそく英国ブックメーカーの上位人気を追いながら有力馬をチェックしたい。

 エースインパクト(牡3歳、仏・ルジェ厩舎)はG1仏ダービー(芝2100メートル)を3馬身半差で快勝。4着フィードザフレーム、8着コンティニュアスと当面のライバルを破った。前走8月の仏G2ギヨームドルナノ賞(芝2000メートル)にも勝利し5戦無敗としている。

 有力候補に違いないが、不安材料もある。前走ギヨームドルナノ賞組は過去に好走していない。ルジェ調教師が好んで使うレースだが、2017年、同師の管理馬で仏2冠を制したブラムトもギヨームドルナノ賞をステップに本番に臨んで5着に敗れた。また、2400メートルの距離とパリロンシャンのコースを経験していない点も気掛かりだ。

 フクム(牡6歳、英・バローズ厩舎)は今年、重度の骨折から復帰し、英G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11ハロン211ヤード)を劇的勝利。昨年の英G1コロネーションC(芝12ハロン6ヤード)に続くG1・2勝目をつかんだ。

 しかしフクムも統計を破る必要がある。101回の長い歴史を持つ凱旋門賞だが、6歳馬は未勝利。1932年モトリコが7歳で制したとはいえ、90年以上も前の話だ。またキングジョージから凱旋門賞へ直行した馬は2010年1着のワークフォース以来、馬券圏内に好走していない。

 コンティニュアス(牡3歳、愛・Aオブライエン厩舎)は父にハーツクライを持つ日本産馬。出世レースの英G2グレートヴォルティジュールS(芝11ハロン188ヤード)をひとまくりで楽勝し、続くG1英セントレジャー(芝14ハロン115ヤード)でも息の長い末脚を使って押し切った。

 もちろん、本馬にも有名かつ壮大なジンクスが立ちはだかる。英セントレジャーと凱旋門賞の同一年制覇を達成した馬はおらず、往年の名馬ニジンスキーも1970年2着とクリアできなかった。今年の英セントレジャーと凱旋門賞の間隔が例年より1週短い点も考慮しなければならないが、敢えて追加登録料12万ユーロ(約1900万円)を支払っての参戦を決めた。出走態勢は整っているということだろう。

スルーセブンシーズ
スルーセブンシーズ

キングジョージ2着からの転戦となるウエストオーバー(牡4歳、英・ベケット厩舎)は、仏G1サンクルー大賞(芝2400メートル)1着、G1ドバイシーマクラシック2着など成績安定。臨戦過程は気になるが、良か稍重馬場で持ち前のスピードが生きるようならフクムとの差を逆転できるはずだ。

 フィードザフレーム(牡3歳、仏・バリー厩舎)は本番と同条件のG1パリ大賞に勝利。追い込み脚質ながら、その威力は手綱を取る名手スミヨンも唸るほど。前哨戦のG2ニエル賞はまさかの2着だったが、陣営のトーンは全く下がらない。悲願の凱旋門賞制覇を狙うバリー師は「今年がダメでも来年は勝つ」と意気込んでいる。

 ファンタスティックムーン(牡3歳、独・シュタインベルク厩舎)は、20頭立てのG1独ダービー(芝2400メートル)で後方待機から大外一気の追い込みを決めた。G2ニエル賞(芝2400メートル)では2番手から早めに抜け出し、フィードザフレームの追い上げを完封。コンティニュアスと同じく追加登録料を投じての出走であり、陣営の自信度がうかがえる。

 スルーセブンシーズ(牝5歳、美浦・尾関知人厩舎)は6月の宝塚記念でイクイノックスのクビ差2着。この好走は海外でも高く評価されている。ただ毎年出る話だが、6月からの休み明けでの勝利は1946年カラカラが最後。2400メートルでの勝ち鞍もなく、これまでのセオリーをひっくり返す激走が求められる。

 ◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。10月1日(日)22時30分から、ラジオNIKKEI第1「凱旋門賞実況中継」に出演予定。

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