世界を魅了したソダシに米紙「希代の牝馬が輝いている」…コロナ禍で希望の灯だった白毛馬を記者が「見た」

ソダシとのラストレースへ、万全の仕上げで挑む今浪厩務員
ソダシとのラストレースへ、万全の仕上げで挑む今浪厩務員

 2020年の阪神ジュベナイルフィリーズで白毛馬として史上初のG1制覇を果たし、21年桜花賞と22年ヴィクトリアマイルのG1計3勝を挙げたソダシ(牝5歳、栗東・須貝厩舎)が1日、電撃引退を決めた。6月の安田記念で7着に敗れた後、脚部不安を発症。くしくも全妹のママコチャ(牝4歳、栗東・池江厩舎)がスプリンターズSでG1初勝利を挙げたこの日、希代のアイドルホースが現役生活に別れを告げた。

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 満面の笑みが忘れられない。昨年4月。須貝調教師がソダシではない管理馬2頭でドバイ遠征を行い、帰国した直後だった。「向こうで海外の競馬メディアに聞かれるのはソダシのことばかりなんだよ。すごいよね」。まるで我が子の自慢をするように切り出した。

安田記念で白いネクタイを着用し、ソダシとの最後のパドックを引く今浪厩務員(右)。左は北村助手

 その1か月半後。須貝師から1通の写真がLINEで届いた。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」が大きな写真とともに「希代の牝馬が競馬場で輝いている」と取り上げた記事だった。米紙が日本の競馬を取り上げるなんて聞いたことがない。それを須貝師に告げると、「世界のソダシだね」と本当にうれしそうに返してきた。ソダシは一度も海外に遠征しなかったが、その輝きは海を越え、競馬の枠も超えた。

今浪厩務員(手前)にひかれるソダシ
今浪厩務員(手前)にひかれるソダシ

 密着した3年余り。須貝師から何度も聞いた言葉がある。「ソダシを見て、皆が元気になってくれれば」。デビューした20年からはコロナ禍で、競馬場は無観客開催など大幅な入場制限を強いられた。だからこそ、強く思う。その遺伝子を受け継ぐ子どもたちが再びターフを盛り上げてほしい。コロナ禍の中で希望のともしびだった母へ、競馬場の大歓声を届けるために―。(山本 武志)

 ◆ソダシの白毛 サンデーサイレンス産駒の祖母シラユキヒメが96年に突然変異で白毛として誕生。母ブチコは同じ白毛でも、胴に父キングカメハメハと同じ鹿毛のぶち模様が入っている。全妹のママコチャは鹿毛。「シラユキヒメ一族」ではソダシ姉妹のほか、メイケイエール(鹿毛)、ハヤヤッコ(白毛)、ユキチャン(白毛)が重賞を勝っているが、必ずしも真っ白な馬体をしているわけではない。

 ◆ソダシフィーバー 珍しい白毛のG1馬ということで、社会的にも注目を集めた。グッズは定番のぬいぐるみのほか、写真集も発売された。21年の札幌記念はコロナ禍で競馬場の入場が1362人に制限されるなか、1万7514人の応募でチケットがプラチナ化。22年ヴィクトリアマイル勝利後には米ニューヨーク・タイムズ紙で特集が組まれるなど、競走馬ではかつてのハイセイコーやオグリキャップに匹敵する人気を誇った

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