【ブリーダーズC】21年に2勝の矢作芳人調教師「チームJAPANで協力して頑張ってほしい」

ラヴズオンリーユーでフィリー&メアターフを制すなど、21年ブリーダーズCで2勝を挙げた矢作師(左から2人目)
ラヴズオンリーユーでフィリー&メアターフを制すなど、21年ブリーダーズCで2勝を挙げた矢作師(左から2人目)

◆ブリーダーズC・米G1(11月4日、サンタアニタパーク競馬場)

 わずか一日で日本競馬の新たな道を開拓した。矢作調教師は21年のブリーダーズCで日本馬初の勝利。しかも、フィリー&メアターフのラヴズオンリーユー、ディスタフのマルシュロレーヌで一日2勝の離れ業だった。あれから2年。今年は日本馬9頭の大攻勢に「俺のおかげだろ」と笑みを浮かべ、こう言葉を続けた。

 「誰でもブリーダーズCは取りたい。そのなかで一つの成功例ができたことは大きいと思う。やはり、結果が出なかったらね(行きづらい)。海外馬にとってのジャパンCも勝てなくて『来ない、行かない』だから」

 特にマルシュロレーヌはBCディスタフで難攻不落と言われた米ダートG1を勝った。日本から近く、欧州から遠い米西海岸開催を狙い、芝でも良績のある馬での挑戦。日頃から口にする「海外でもレースは相手関係や適性を考えて選ぶべき」を実践するレースだった。

 「何より牝馬2頭で行って、ともにいい状態で使えることは少ないから、まずはそこが勝因。それ以前に適性は考えていますよ。アメリカのダートは何よりもスピードが必要。パワーじゃないんです。日本でのダート馬という概念は変えていかないといけない」

 今年は日本競馬の悲願とされる凱旋門賞への出走がわずかに1頭。一方、2年ぶりの西海岸開催となった米競馬の祭典には9頭が集まった。競馬界全体が自身の理想とする方向へと向かっている。

 「普通に考えて、日本の競馬で成績を残している馬が凱旋門賞で成績を残すかとなると、それは難しい。一般的な日本馬の傾向からすれば、芝はブリーダーズCの方が勝利に近いというのは当然だと思う。前回の時に俺が『西海岸、西海岸』と散々言ってきたことも大きかったかな(笑い)」

 05年の開業以来、数々の海外遠征を積み重ねてきた。だからこそ、強く思うことがある。

 「チームJAPANで協力して頑張ってほしい。例えば、今のうちなら28馬房あるけど、エイダン(オブライエン)とか(豪州の)クリス・ウォーラーとか300や400馬房を持っているところと戦うんです【注】。1厩舎だけで行くなら、10分の1の勢力で相手の巨大勢力と戦っていかないといけない。ただ、今回は9頭いる。しっかりといい連係ができれば五分の戦いもできるんじゃないか。そういう考えを持っています」

 先駆者は“仲間”たちからの吉報を心から待っている。(山本 武志)

 ◆矢作調教師の21年ブリーダーズC 米西海岸のデルマー開催に初めて管理馬2頭を送り出した。川田が騎乗したフィリー&メアターフのラヴズオンリーユーは好位から馬群の間を割るように接戦を制し、日本馬にとって初勝利をつかんだ。さらにマーフィーが騎乗したディスタフのマルシュロレーヌは後方からまくり気味に進出すると、最後まで後続の追撃を封じ込んでの激勝。芝とダートで一日2勝という快挙を成し遂げた。

 【注】エイダン・オブライエンはガリレオなど名馬を数多く手がける愛国のトップトレーナー。クリス・ウォーラーは名牝ウィンクスなどを手がけた豪州のトップトレーナー。日本ではJRAから馬房を借りる形で最大30馬房しか持てないが、海外では管理馬の数は各自に委ねられており、厩舎にとっては数百もの馬房を持つこともある。

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