◆ブリーダーズC・米G1(11月5日、サンタアニタパーク競馬場)
米国競馬の祭典、2023年ブリーダーズCが11月3日、4日(日本時間同4日、5日早朝)にサンタアニタパーク競馬場で行われる。日本勢は9頭が8レースに登録。ダートの世界最強馬決定戦とされるクラシックで、今年のドバイ・ワールドCを日本勢で初制覇したウシュバテソーロが、史上初の同一年両レース制覇を目指す。管理する高木登調教師(58)=美浦=は「挑戦者の気持ちで挑む」と話した。(聞き手・石行 佑介)
―ウシュバテソーロはデビューから芝を22戦連続で使って3勝。3歳時の20年にダービートライアルのプリンシパルSで4着に入ったが、5歳4月にダートに転向した。
「歯がゆい競馬が続いていてもうワンパンチ欲しいなと。パワー型ですし、以前からダート適性は感じていました」
―ダート初戦の22年横浜S(3勝クラス)は後方2番手から運んで4馬身差の快勝。
「あれだけ後ろから行きましたからダメかなと思いましたね。芝でもある程度結果を出していたので、一発で結果を出さないと、という思いでした」
―昇級戦のラジオ日本賞は3着も、ブラジルC(リステッド)、カノープスSと連勝。その後も東京大賞典、川崎記念と交流G1を含め4連勝。手応えを感じていたか。
「カノープスSの時の完全にマークされるきつい競馬を勝ち切った時に『これはすごいな』と思いました。まさかここまで来るとは思わなかったですけどね」
―そして23年春はドバイ・ワールドCに挑戦。
「(交流)G12連勝でオーナーサイドから行きましょうと打診があって、結構(レース数を)使っていたので悩みましたが、疲れもないので行くことに決めました」
―世界の頂に立った気持ちは?
「スタート直後は(後ろ過ぎて)ビビりましたけどね(笑い)。直線では差せそうだなという感じはありましたし、レース後はホッとしました。そんなに感情を表現する方じゃないんですが、ただ、表彰式の日の丸には感動しましたね」
―ウシュバテソーロの強さを挙げるなら?
「やっぱり真面目に走るところですよね。最後のゴールまでしっかり走るというのは一つの能力ですよね」
―これまで手掛けた平地G1馬(スノードラゴン、サウンドトゥルー)とも共通する?
「そうですね。なかなか歯を食いしばって最後まで頑張るってできないと思いますよ」
―再び世界の頂点に挑む。状態は?
「(本番は)平常心で挑んでくれれば。日本テレビ盃の時はたてがみを2、3回編んだらレースだと分かったのか、スイッチが入って手がつけられなくなりましたから」
―本番への対策や期待は?
「(米国競馬はレースの)最初から速いなという印象ですね。それを考えてドバイを経験させましたし、砂も似ているという話も聞きましたしね。相手関係はやってみなきゃ分からないですし、挑戦者として挑みたい」
【ウシュバテソーロ雰囲気はいい】
22日に美浦・Wコースで5ハロン68秒4―11秒7の国内最終追い切りを消化後、24日午前10時4分に成田国際空港を出発。同日の日本時間23時58分にサンタアニタパーク競馬場へと無事到着した。出国前に高木調教師は「いい感じで行けると思います」と話し、ドバイ・ワールドCに続く海外G1連勝に力を込めた。
◆高木 登(たかぎ・のぼる)1965年5月25日生まれ。58歳。神奈川県出身。2007年3月に美浦で厩舎を開業し、同10日に初出走で勝利。14年の毎日杯をマイネルフロストが勝利し、重賞初制覇。同年のスプリンターズSのスノードラゴン、16年チャンピオンズCをサウンドトゥルーが制しJRA平地G1は2勝。昨年12月にはニシノデイジーが中山大障害を制し、障害G1初制覇。JRA通算4594戦356勝(23年10月29日現在)。
◆ブリーダーズC 1984年に創設されたあらゆるカテゴリーのG1をまとめて開催する米国競馬の祭典。名称の由来は創設当初は優勝賞金が生産者(ブリーダー)の資本から拠出されていたことから。開催競馬場は毎年変わる。創設1年目は7つのG1を一日で行っていたが、07年以降は2日にわたって10以上のG1が行われ、クラシックはメイン競走の一つ。過去に同一年にドバイ・ワールドCと両方を制覇した馬はいない。