香港国際競走が12月10日に香港のシャティン競馬場で行われる。小欄ではG1香港カップ(芝2000メートル)に向けたステップレースとして、10月28日の豪G1コックスプレート(ムーニーバレー競馬場・芝2040メートル、12頭立て)を取り上げたい。
コックスプレートはオーストラリア上半期における中距離の最重要G1。「伝説が生まれるレース」と称される一戦で、近年を少し振り返っても、2015年から2018年にかけて4連覇を決めた豪州の女王ウインクス、2019年の覇者で日本屈指の女傑リスグラシュー、2021年の優勝馬でのちに英G1プリンスオブウェールズSも制する愛国のステートオブレストと、歴代ウイナーには一流馬の名が並ぶ。
今年、伝説の仲間入りを果たしたのがロマンチックウォリアー(セン5歳、香・シャム厩舎)だ。外めの4番手追走から強引に差し切りを図るパワープレーを仕掛けて、最後は2着ミスターブライトサイドとの短頭差の大接戦に勝利した。勝ち時計は2分03秒16(良馬場)。
ロマンチックウォリアーは近2シーズン連続で香港最優秀中距離馬を受賞。昨年の香港カップでは、2着ダノンザキッドをはじめ日本勢を全く寄せ付けず4馬身半差の圧勝を収めた。今年4月のG1クイーンエリザベス2世Cでは、今回再び対戦するプログノーシス(牡5歳、栗東・中内田充正厩舎)の追い上げを物ともしない2馬身差快勝で連覇を達成している。
今シーズン初戦に豪州のG1ターンブルS(4着)を選び、続くコックスプレートで香港調教馬初のビッグタイトル獲得となった。また香港調教馬が豪州のG1に勝つのは、2005年のケープオブグッドホープ(G1オーストラリアS)以来のこと。陣営の積極性と、それに応えたロマンチックウォリアーの走りは天晴れである。
コックスプレートで破った相手は2着ミスターブライトサイド(G1ドンカスターマイル2勝)、3着アリゲーターブラッド(G1マイトアンドパワーS)、ゴールドトリップ(G1メルボルンC)などG1馬ばかり。世界王者イクイノックスは別格として、アジア・オセアニアにおける最強クラスの中距離馬だけに、香港カップ連覇の期待は大きい。
◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。12月10日(日)16時45分から、ラジオNIKKEI第1「香港国際競走実況中継」に出演予定。