◆第41回フェブラリーS・G1(2月18日・東京競馬場・ダート1600メートル)
2024年最初のJRA・G1、第41回フェブラリーSが18日、東京のダート1600メートルで行われる。松末守司記者にとって思い出の馬は、14年に16頭立て16番人気で勝利したコパノリッキー。あっと驚く大駆けで快進撃をスタートさせ、G1・11勝の日本記録を打ち立てた。10年が過ぎ、「考察」プロローグ編で当時の衝撃をつづり、混戦必至の今年のメンバーからカラテをピックアップした。
「神様って本当にいるんだな」―。2014年2月23日。その年のフェブラリーS当日、私はソチ五輪が行われているロシアにいた。約2週間ほぼ寝ずに取材を続けた、まさに最終日だった。日本から遠く離れていたが、現地の午前10時すぎくらいだったか。スマホを取り出し、レース結果をチェックすると最低16番人気のコパノリッキーの勝利が目に飛び込んできた。
単勝2万7210円、89年エリザベス女王杯のサンドピアリス(4万3060円)に次ぐ2位のG1単勝高配当。疲れもあって、しばらく意味を把握できなかったが、状況をのみ込んで出てきたのが冒頭の言葉だ。
レースは、馬なりで2番手につけ、直線で堂々と抜け出して2番人気のホッコータルマエを振り切った。まさにニューヒーロー誕生だった。
同馬は3歳春に右前トウ骨を骨折。6か月の休養を挟んで、復帰後の2戦を惨敗していたが、坂路中心の調整からCWコースでの調教に変え、強度を上げるなど、諦めず飽くなき挑戦を続けたことが、素質馬の復活につながった。
同五輪では私が担当していたスキー・ジャンプの葛西紀明が、個人ラージヒルで史上最年長となる41歳で初の個人メダルとなる銀メダルを獲得した。二十数年のジャンプ人生は度重なるルール改正、ベテラン外し、さらには家族の死など、苦しみが続いたが、不屈の闘志で何度も立ち上がり快挙を引き寄せた。双方の生き方が、シンクロしたのを今も昨日のことのように覚えている。
あれから10年。大混戦の今年に注目するのは芝重賞3勝のカラテだ。8歳にして2歳時以来のダート戦(2走して〈13〉〈8〉着)だが、母の父にフレンチデピュティがいるパワー型。豊富な経験を生かし、奇跡を紡ぎ出す可能性は十分にある。(松末 守司)