◆第84回皐月賞・G1(4月14日、中山競馬場・芝2000メートル)
牡馬クラシック3冠初戦、皐月賞・G1は14日、中山競馬場の芝2000メートルで行われる。坂口智康調教師(43)=栗東=は、開業6年目でJRA平地G1初出走。豪快な差し脚で新馬、きさらぎ賞を連勝したビザンチンドリームを送り込む。「伸びしろが大きい」と全く底を見せていないエピファネイア産駒と、無敗での快挙達成に挑む。(取材・構成=山本 武志)
雌伏の時を経て、大舞台にたどり着いた。19年開業の坂口調教師は新星ビザンチンドリームと挑む皐月賞が6年目で初の平地G1参戦になる。
「本当にようやくです。もうちょっと気楽な立場で、とは思いますよね。まだ2回しか走っていませんから、力関係は分からないですね」
新馬は大外から豪快に突き抜ける3馬身差の完勝。続くきさらぎ賞も大外からの豪脚で内2頭をゴールライン上で2センチだけかわし、重賞初タイトルをつかんだ。
「デビュー前から心肺機能が高かったです。(初戦は)ある程度期待してましたけど、予想以上の強さでした。(きさらぎ賞は)直線に向いた時は届かないかなという感じでしたけど、本当に力でねじ伏せたという競馬でした」
異色の存在だ。育成前に体質的な問題があり、預託が決まったのも初めて見たのも2歳の夏前。同世代にはデビューへ始動している馬もいる頃だ。
「育成で乗り始めたのが、おそらく2歳になってから。他馬より半年ぐらい遅れています。この時期の半年は大きいですから。そのぶんも含め、伸びしろは大きいと思います」
父は元調教師でJRA重賞を27勝した坂口正則さん。中学2年まで厩舎に住み、馬が身近にいる環境の中で、自分の進むべき道は自然と定まった。
「調教師(になること)はずっと考えていました。小学生くらいからだと思います。やはり、父ですかね。競馬場にも行っていて、口取りとか表彰式とかを見てましたから。騎手というのはなかったです」
その父の厩舎で08年から働いた。調教師試験に合格するまでの約10年で忘れられない馬がいる。15年香港C、16年イスパーン賞と海外G1を2勝したエイシンヒカリだ。
「パワーとエンジンが今まで乗ったことがないような感じでした。速いところに行くとグッと沈んで、回転数の上がる馬でした。あの馬は普段の調教でいかに落ち着かせて走らせるか、それだけでしたね」
名馬との出会いも経て、目標だった調教師になって6年目。ホースマンのDNAを受け継いでいるからこそ、重みを知るクラシックの舞台。もうすぐ足を踏み入れる。
「まだ折り合い面で心配はありますが、瞬発力もパワーもある。前回のように長くいい脚も使えそうです。もちろん、プレッシャーもありますけど、楽しみの方が大きい。とりあえず順調に、ゲートインまで無事に行けるようにしっかり調整していくだけです」
◆坂口 智康(さかぐち・ともやす)1981年2月6日、滋賀県生まれ。43歳。大学時代に乗馬を始め、海外での研修などを経て、08年から父・坂口正則調教師の厩舎で助手。19年に定年引退した父の厩舎を引き継ぎ栗東で開業した。同年5月のかきつばた記念・交流G3(ゴールドクイーン)で重賞初制覇。J・G1は4度出走がある。JRA通算1108戦62勝(8日現在)。