公営競馬最多31連勝中のホクショウマサル、最高峰レース「ばんえい記念」挑戦へ

前走で連勝を31に伸ばしたホクショウマサル(騎手は阿部武)(写真提供・ばんえい十勝)
前走で連勝を31に伸ばしたホクショウマサル(騎手は阿部武)(写真提供・ばんえい十勝)

 ばんえい競馬の最高峰レース、ばんえい記念・BG1(21日、帯広競馬場・直線200メートル)にホクショウマサル(牡9歳、坂本東一厩舎)が初挑戦する。前走で2018年7月からの連勝を31に伸ばし、自身が持つ国内公営競馬最多連勝記録を更新中。新型コロナウイルスの影響で無観客開催となるが、元トップ騎手の坂本調教師や亡きオーナーの思いも乗せ、デビュー100戦目の節目にビッグタイトルを狙う。

 ホクショウマサルが最高峰に挑む。騎手時代に2681勝、トモエパワーで07年ばんえい記念も制した坂本調教師は「その栄誉があるかないかで馬も人も生涯が変わる。今の充実ぶりなら楽しみ」。調教師としては延べ11頭で12、13年(ホッカイヒカル)の4着が最高。勝つ喜びも難しさも知るからこそ、熱い言葉が口をつく。

 勢いはとどまることを知らない。19年2月に20連勝でばんえい最多記録を更新(従来はサカノタイソンの19連勝)すると、今年1月には他公営競馬含め国内最多となる30連勝(従来は宇都宮競馬・ドージマファイターの29連勝)。「騎手を確かめるほどの賢さ」ゆえ発馬は安定しないが、補って余りある末脚がある。「こんな馬は、そう出会えない」。義理の息子・阿部武臣騎手と共に寄り添ってきた愛馬に、驚きと感謝を寄せる。

 快進撃の裏には男と男の約束があった。元々13年デビューで明け3歳のばんえいダービー(BG1)も制した素質馬。だが、喘鳴(ぜんめい)症で5歳3月から7歳7月まで2年4か月の長期休養を余儀なくされた。手術を終え復帰間近だった18年3月。坂本師の元にマサルを連れた井内昭夫オーナー(現在は妻の紀子さん名義)が現れた。休養前には騎手起用法などを巡り何度も衝突。転厩の話すらあった。「やっぱり坂本さんしかいない。この子だけはどうか頼む」。熱意に根負けし引き受けた数日後、オーナーは病気で急逝した。その後、最下位クラスから31連勝でたどり着いた大舞台。「マサルは忘れ形見。活躍する姿を届けたい」と2年越しの恩返しへ力を込める。

 2月29日から無観客開催が続く帯広競馬場。ばんえい記念でもファン一体の「それっ!」のかけ声は響かない。だが、この一戦への関係者、馬の熱量は例年と同じだ。「寂しいけど勝つ喜びや重みは変わらない。この馬で、という思いは強いよ」と坂本師。初めて背負う1トンの負担重量も克服し、マサルが主役の座を張りにいく。

 ◆ばんえい競馬とは 体重400~600キロ前後の競走馬より大きい、体重800~1200キロ前後のばんえい馬(通称・ばん馬)が騎手と重量物を積載した鉄製のそりを引く。最低重量は2歳戦の480キロで馬齢や収得賞金に応じ重くなる。最大10頭立てで直線200メートルのコースで2か所の障害(低い山)を越えながら1着を争う。ばんえい記念は最上位の「BG1」でも最高峰に位置づけられる最強馬決定戦。負担重量も最大1トン(4、5歳10キロ減、牝馬20キロ減)の激しい戦いとなる。

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