【天皇賞・秋 吉田が見た牝馬の盾3】ヘヴンリーロマンス激走の陰で「重責」果たした松永幹騎手

ヘヴンリーロマンス(中)がゴール前の叩き合いを制した05年の天皇賞・秋(左は2着ゼンノロブロイ、右は3着ダンスインザムード)
ヘヴンリーロマンス(中)がゴール前の叩き合いを制した05年の天皇賞・秋(左は2着ゼンノロブロイ、右は3着ダンスインザムード)

◆第162回天皇賞・秋・G1(11月1日・芝2000メートル、東京競馬場)

 美しいシーンだった。ゴンドラで観戦された天皇皇后両陛下の温かな拍手が、競馬場を包み込んだ。白いヘルメットを脱いで頭を垂れた松永幹夫騎手(現調教師)の姿は、平成の競馬史に刻まれた。

 2005年。戦後初の天覧競馬は単勝14番人気のヘヴンリーロマンスが激走し、3連単122万6130円。大波乱の陰には、ちょっとしたドラマが隠されていた。

 日本騎手クラブの役員で関西支部長だった松永幹は、両陛下をお出迎えするという重責があり、極限の緊張によりレース直前まで競馬どころでなかったという。一方、馬の出来は最高潮だった。東京・2000メートルで、絶好と言える最内1番枠を引いた。本来なら気合が入りすぎてもおかしくなかったが、「無事に、きれいなレースを」と、スタートから最短距離を回った。「いい手応えで直線を迎えましたが、追い出してから一頭抜くごとに『あれっ、あれっ』という気持ちでした」

 ゴール寸前、ゼンノロブロイ、ダンスインザムードの間を鮮やかに割って出ると、どよめきが待っていた。「おケガはないですかと、お言葉をかけていただきました」。レース後、ミキオは無心の一撃を振り返りながら、両陛下の優しさをあらためてかみしめていた。(編集委員・吉田哲也)

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