【2020年レース回顧】4年目の横山武を覚醒させたウインマリリンのフローラS制覇

横山武史騎手の手綱でフローラSを勝ったウインマリリン(右)
横山武史騎手の手綱でフローラSを勝ったウインマリリン(右)

 ◆フローラS・G2(4月26日、東京・芝2000メートル)

 オークストライアルのフローラSで注目されていたのは、府中でG1・2勝を挙げた名牝エアグルーヴの孫にあたるレッドルレーヴ(3番人気)とひ孫のスカイグルーヴ(1番人気)の対決だった。ところが、主役の座を奪ったのは、4番人気のウインマリリン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だった。

 朝から強風が吹き荒れる天候。スタートから向こう正面では追い風になった影響からか、1000メートルの通過は58秒6となった。よどみのない流れで迎えた最後の直線。猛烈な向かい風に乗ったダートコースの砂が全馬を包むように襲いかかってくる。1度ならず2度、3度…。砂煙が消えた瞬間、トップに立っていたのは4番手を進んでいた横山武史騎手騎乗のウインマリリンだった。猛烈な向かい風にひるむ馬もいる中で、内ラチ沿いから抜け出したスクリーンヒーロー産駒が首差で勝者となった。

 デビュー4年目にして重賞初制覇を飾った21歳(当時)は、馬上で派手にガッツポーズを繰り返した。「残り300メートルくらいのところでムチを落としてしまって…。この馬の力で勝ってくれて良かった」。大事なムチを落とすアクシデントを抱えながら、視界を遮る砂嵐のなかでつかんだ記念すべき勝利は、自身を覚醒させるのに十分な出来事だった。重賞初Vを達成した日の帰宅後には「何度も映像を見ました」という。喜びをかみしめながら、自らの手綱でオークス出走の権利をつかみ取った結果を自信に変えつつあった。

 重賞初制覇の2週間後にあたる5月10日の東京競馬で開催4日間の騎乗停止処分を受けたため、自らの手で勝ち取ったオークスで騎乗する機会が失われた。しかし、この1勝が契機となったように、それまでは1か月で5勝しか挙げられなかった若手が4月(10勝)から一気に勝ち星を増産し始めた。昨年は54勝だったが、今年は94勝で関東リーディング1位にまで上り詰める急成長ぶりを見せた。

 デビュー4年目の若武者は「4・26」の府中で覚醒したと思わずにいられない。

(恩田 諭)

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