【天皇賞・秋】ヒシイグアスの阿部雅英オーナー、G1勝ってもう一度「ヒシ」復活を

阿部オーナーが色紙に記した座右の銘は「運とご縁」
阿部オーナーが色紙に記した座右の銘は「運とご縁」

◆第164回天皇賞・秋・G1(10月31日・芝2000メートル、東京競馬場)

 G1馬5頭が集結した天皇賞・秋(31日、東京)には、オールドファンに親しみのある「ヒシ」一族が名を連ねた。G1初挑戦のヒシイグアスを所有するのは、初代の阿部雅信氏から3代目に当たる阿部雅英オーナー(58)。03年の宝塚記念を勝ったヒシミラクル以来となる「ヒシ」一族のG1制覇にかける意気込みなどを聞いた。(取材・構成=恩田 諭)

 ―ヒシイグアスは昨年4月の石和特別(2勝クラス)からウェルカムS(3勝クラス)、中山金杯、中山記念と4連勝を飾り、天皇賞・秋で初めてG1に挑みます。

 「(中山記念後は)大阪杯も選択肢にありましたが、(続けて)3回使っていましたから。香港から招待もいただいたんですが、本番は秋だということに」

 ―16年セレクトセール(当歳)では9700万円の落札額でした。

 「アドマイヤジャスタが、本当は私が一番狙っていた馬だったんです。ヒシイグアスは、きょうだいが気性面の影響からオープンまでいっていないというのが唯一の気掛かりでしたけど、馬体は気品があって素晴らしかったです」

 ―ここまでの11戦で最も記憶に残っているレースを教えてください。

 「中山金杯です。重賞初制覇ですし、3代(※1)続けて重賞を取れた安ど感と、うれしさがありました」

 ―祖父の雅信氏、父の雅一郎氏と3代続けてヒシのオーナーとして知られています。

 「小学生の頃、中山競馬場に(阿部家の)専用馬房があって、毎週、祖父が私を連れていきました。その後に近くのステーキ屋さんでステーキが食べられる、と付いていった記憶があります」

 ―馬主になる気持ちが芽生えたのはいつですか。

 「仕事(銀行の駐在員)で米国にいた時、父から『馬主を始めた。日本の馬じゃ勝てないから外国で買って走らせる。セリがロサンゼルス近郊であるから寄る』と急に連絡が来たんです。そこで買ったのが(2代目)ヒシマサル(※2)。当時20代後半でしたがセリに同行するようになったそのあたりからですね」

 ―「ヒシ」の冠名を受け継いで、3代目のヒシマサルも命名しました。

 「父が亡くなって2年後ぐらいに、周りの人から『ヒシという名前はつながりがあって、あなたがやらないで誰がやるの』と。その時にヒシマサルという馬がいて、父もそれをつけたなと。3代続けると人は笑うのかなとかいろいろ考えましたが、みんながいいからつけろと」

 ―3代目ヒシマサルは3勝を挙げて引退しました。

 「私はルーラーシップが好きだったんですが、初年度産駒でセレクトセールのセリ名簿の1番目にいたんです。運良く落札できて、(冠名を受け継いだ最初の馬を)ヒシマサルという名前にしました」

 ―先代から伝えられてきたことはありますか。

 「口酸っぱく言われていたのが、『本業なくして競馬なし』と。また、趣味ではあるけれど本気でやれと言われました」

 ―ヒシ一族で最も印象に残っているレースを教えてください。

 「ヒシミラクルの菊花賞Vですね。京都競馬場で(レース後に)『ヒシの復活ですね』ってインタビューで言われて。オールドファンもいっぱいいらして、こんな喜んでくれているのかと。それが本気でやらなきゃなって思ったきっかけですね」

 ―ファンは今回も「ヒシ」の激走を期待しています。

 「勝つようなことがあれば、また(復活と)言われるんだろうなと。みんなが昔のことを覚えていて、ヒシの勝負服でとか、そういうコメントを聞くのもうれしいです」

(※1)初代は1947年に国営競馬(JRAの前身)で馬主資格を取得した雅英氏の祖父・雅信氏。阿部木材工業(現アベキャピタル)の創業者で、自社の屋号の「菱雅」から「ヒシ」の冠名を使用。2代目が事業も継承した息子の雅一郎氏。雅英氏が3代目となる。

(※2)ヒシマサルは初代の雅信氏から3代続けて名付けられた。初代は1955年生まれの鹿毛で、セントライト記念Vなど通算27戦13勝。2代目は1989年生まれの黒鹿毛で、91年の米国バレッツセールで購入。重賞3勝を含む5勝(13戦)を挙げた。3代目は14年生まれの黒鹿毛で、落札額が6600万円(15年セレクトセール)。通算10戦3勝。

 ◆阿部 雅英(あべ・まさひで)東京都江東区生まれ。58歳。慶大法学部政治学科を卒業後に三和銀行(現三菱UFJ銀行)を経て、阿部木材工業(現アベキャピタル=現在の事業内容は不動産の賃貸借)の代表取締役に就任。趣味はゴルフ、クラシックカーに乗って全国をまわること。

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