福永祐一騎手 最盛期で調教師転身の理由「もっとやりたいこと」コントレイル産駒に「携わりたい」

調教師合格者一覧で自分の名前を指さす福永
調教師合格者一覧で自分の名前を指さす福永
合格後の囲み取材に晴れやかな表情で対応する福永
合格後の囲み取材に晴れやかな表情で対応する福永

 JRA新規調教師免許試験の合格者が8日、発表され、歴代4位の2613勝を挙げる福永祐一騎手(46)=栗東・フリー=が合格した。今年もG1を勝利するなど、一線級での活躍が続くトップジョッキーだが、来年2月末での現役引退も決定。日本ダービー歴代2位の3勝を挙げる名手はステッキを置き、来春から新たなホースマン生活をスタートさせる。

 晴れやかな表情で、福永は真っすぐに前を向いた。来年2月末での電撃引退。96勝でリーディング6位と自ら持つ史上最長12年連続100勝以上の更新も目前だ。最盛期とも言える時期に異例の決断をした理由について、「四半世紀、騎手を続けてきて、最高の仕事だなと思って乗り続けている中で、それでももっとやりたいことが見つかった。それが一番です」。難関とされる調教師試験に一発合格し、希望に満ちあふれた瞳は、後悔を全く感じさせなかった。

 以前から調教師を目指す気持ちはあったものの、背中を大きく押したのは“あの馬”だった。「コントレイルと出会ったことで日本競馬でやれることはやった。その産駒に携わりたい」と口にしたことがある。脚元の強くなかったパートナーのために自らが牧場へ出向くこともあれば、矢作厩舎と調教過程も相談した。

 “三位一体”となり、大事に育ててきた結果、騎手生活で「大きな誇り」と振り返る史上3頭目の無敗3冠を20年に達成。「最初から強い馬はそう多くない。いろいろなところを修正しながら、一流の競走馬に大成させていくんです」。調教師試験の勉強を始めたのはコントレイルが引退した3か月後、今年の2月だった。

 家族に支えられてきた。父は「天才」と呼ばれながら、落馬事故で引退した福永洋一さん。「福永洋一という偉大な騎手がいたからこそ、僕はこの世界に入ってこられたし、たくさんのサポートをしてもらった」。20代の頃から「もう辞めれば」と心配していた母の裕美子さん、受験を相談していた妻・翠さんにも発表後に電話で報告。「すごく喜んでくれました。(母には)親不孝をしてきたから」と笑った。

 騎手生活は残り3か月。「残された期間で一人でも多くの方に見ていただければ」。一方で視線はさらに先を見据える。「G1を勝てる馬の背中を知っている。これは大きな強みだと思うし、存分に生かせる経験だと思っています」。平成の日本競馬を彩った名騎手は、令和に名調教師として戻ってくる。(山本 武志)

 ◆調教師試験とは 例年9月中旬に1次試験、11月下旬に2次試験を実施。1次試験で競馬関係法規や調教に関する専門的知識が問われ、2次試験は「学力及び技術に関する口頭試験」と「人物考査」を行う。今年度は133人が挑戦し、合格は1次試験23人、2次試験7人の倍率19倍だった。騎手と調教師の兼業は認められておらず、福永騎手の場合、本人の申請により、調教師免許は3月1日から有効となる。

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