小欄ではG1香港ヴァーズについて血統面から検討したい。過去5年を振り返ると、ガリレオ系種牡馬の産駒が3勝、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒が2勝。特に後者は2018年2着リスグラシュー(父ハーツクライ)、2019年1着グローリーヴェイズ(父ディープインパクト)、同2着ラッキーライラック(父オルフェーヴル)、昨年1着グローリーヴェイズと、出走機会4回連続で連対している。
このレース3勝目を狙うグローリーヴェイズは7歳。年齢的な衰えが気になるところだが、そんな不安を払拭するのが母方に入るノーザンテーストだ。祖母の父メジロライアンの父の父にあたる。
ディープインパクト | サンデーサイレンス 青鹿毛 1986 | Halo |
Wishing Well | ||
ウインドインハーヘア 鹿毛 1991 | Alzao | |
Burghclere | ||
メジロツボネ 芦毛 2008 ミスタープロスペクター系 | スウェプトオーヴァーボード 芦毛 1997 | エンドスウィープ |
Sheer Ice | ||
メジロルバート 鹿毛 2003 | メジロライアン | |
メジロラモーヌ |
当時7歳かつ引退レースだった2001年の香港ヴァーズで、劇的なG1初制覇を決めたのがステイゴールド(父サンデーサイレンス)。同馬は祖母の父にノーザンテーストを持っていた。
前記ラッキーライラック、G1香港カップを制したウインブライトとモーリスは父方を介して、G1クイーンエリザベス2世C優勝のルーラーシップも祖母の父に名種牡馬の血を内包。当地に強いノーザンテーストのアシストがあるだろう。それはモーリスを送るスクリーンヒーローの産駒ウインマリリンにも通じるところだ。
ストーンエイジは、父が2015・2017年ハイランドリール、2020年モーグルと当レース覇者を送るガリレオ。先輩2頭の母の父はともにダンチヒ系デインヒルだったが、本馬は同系アナバーという血統構成で、G1愛ダービーとG1英セントレジャーに勝ったカプリと同じだ。おばにはG1仏オークス馬ブライトスカイがいる。
Galileo | Sadler's Wells 鹿毛 1981 | Northern Dancer |
Fairy Bridge | ||
Urban Sea 栗毛 1989 | Miswaki | |
Allegretta | ||
Bonanza Creek 鹿毛 2010 ダンチヒ系 | Anabaa 鹿毛 1992 | Danzig |
Balbonella | ||
Bright Moon 鹿毛 1990 | Alysheba | |
Bonshamile |
ブルームは、父がガリレオ後継の英・愛ダービー馬オーストラリア。ここでは父の母も光る。ウィジャボードは2004年と2006年の欧州年度代表馬で、英・愛オークスやG1プリンスオブウェールズSなどG1・7勝を挙げた名牝。2005年の香港ヴァーズでは日本のシックスセンスに2馬身あまりの差をつけて快勝している。残念ながら先月21歳でこの世を去ったが、ブルームにとっては強力な援軍となるだろう。
Australia | Galileo 鹿毛 1998 | Sadler's Wells |
Urban Sea | ||
Ouija Board 黒鹿毛 2001 | Cape Cross | |
Selection Board | ||
Sweepstake 鹿毛 2005 ノーザンダンサー系 | Acclamation 鹿毛 1999 | Royal Applause |
Princess Athena | ||
Dust Flicker 栗毛 1999 | Suave Dancer | |
Galaxie Dust |
◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。12月11日(日)ラジオNIKKEI第1「香港国際競走実況中継」に出演予定。