函館競馬場の第4コーナー付近に立ち並ぶキッチンカー。なかでもひときわ人気を集めるのが、一般社団法人「Blue Commons Japan」が提供しているブリラーメンだ。函館伝統の清湯(ちんたん)スープにブリのエキスを加えた塩ラーメン(850円)は、22年の北海道新技術・新製品開発賞において食品部門大賞を取った極上の一杯。今年開発された油(しょうゆ)ラーメン(900円)もブリの強烈なうまみが詰まっている。2杯ともたいらげたが、年間100食近くラーメンを食べている記者も思わずうならされた。
全国的にも類をみないラーメンが誕生した背景には、海洋問題がある。イカの街として有名な函館だが近年は深刻な不漁続き。市によると21年の漁獲量は2476トンと、12年の2万3048トンから約10分の1にまで減っている。原因は地球温暖化を起因とした水温上昇による魚種交代。対照的に漁獲量が増えたのが南方の魚だったブリで、21年の北海道の漁獲量は全国1位の約1万4000トンだった。その大半が函館で水揚げされているが、当地にはブリを食べる文化がなく多くが処分されていた。そこで、新しい名物にするべく開発されたのがブリ塩ラーメンだ。
Blue Commons Japanの久光成弥氏は「食べることによって、その奥にある海洋問題にも思いを向けてほしいですね」と語る。函館の新ご当地グルメは、環境問題についても考えさせられる貴重な一杯だった。(角田 晨)