【京都11R・菊花賞】春2冠を分け合った2強の23年ぶりの対決に注目が集まる一戦。タスティエーラ、ソールオリエンスが首差の大激戦を演じた日本ダービーの勝ち時計は、3冠牝馬リバティアイランドが勝ったオークスの2分23秒1より2秒1遅い2分25秒2だった。皐月賞馬、ダービー馬ともに不在だった昨年のレースを制したアスクビクターモアは、ダービー3着時の時計が2分22秒2。現在、春のクラシック上位馬が君臨している世代の頂は、さほど高くない可能性がある。超新星が、いきなり3冠目のタイトルをかっさらって不思議のない情勢に思える。
本命は未勝利から3勝クラスまで全て上がり1位で4連勝中のドゥレッツァ。特筆すべきは6月4日のホンコンJCT(2勝クラス、東京・芝2000メートル)だ。ラスト600メートルの200メートルごとのラップが11秒0―11秒2―11秒2となった究極の加速レースを、上がり「32秒7」で差し切りV。今春開催の東京・芝1800メートル以上で最速の末脚だった。
5月の3歳1勝クラス(芝1800メートル)で「33秒0」を出したレーベンスティールはセントライト記念でソールオリエンスを封じ、同じく5月のむらさき賞(同)で「33秒3」のローシャムパークは函館記念、オールカマーを連勝。ちなみにホンコンJCTと同日に行われたマイルG1・安田記念の上がりNO1は3着シュネルマイスターの「32秒8」だった。ドゥレッツァの「32秒7」の価値は決して低くない。
頼もしいルメール
尾関調教師が「いいことはない」と語るように大外17番は歓迎ファクターではないが、経験のない多頭数競馬でもまれる心配がある内枠や、なまじ外に数頭いる枠よりも戦いやすいだろう。鞍上のルメールは12番枠のフィエールマン(18年)を勝利に導き、18番のオーソクレース(21年、阪神)で2着、17番のリアファル(15年)で3着。道中でスムーズにポジションを押し上げながら、しっかり折り合わせる匠の技は頼もしい限りだ。
9歳で早逝した父ドゥラメンテは菊花賞に近2年で4頭を送り込んだだけだが、一昨年は勝ち馬タイトルホルダーを輩出した。下りを使って加速できる京都で切れ味がさく裂すれば、勝機は十分にある。複勝(17)、馬連(17)―(14)(12)(11)(1)(7)(8)(10)。(大上 賢一郎)
◆春2冠不出走馬の菊花賞制覇 過去83回で4分の1を超える23回。うち8回は皐月賞馬、日本ダービー馬ともに出走しなかったケースだが、残る15回は春の優勝馬を撃破しての戴冠だった。近年は春の勝ち馬が天皇賞・秋や凱旋門賞に矛先を向け、菊花賞に出走しないケースも増加。21世紀に入ってからの22年間では、半数の11回が春2戦不出走馬の勝利だ。