武豊“愛馬”とラストランへ「悔しいことも何度もあった。でも、そのたびにまた勝ってくれて、勇気をもらえた」

絶好の仕上がりで引退レースを迎えるドウデュース(左)(カメラ・高橋 由二)
絶好の仕上がりで引退レースを迎えるドウデュース(左)(カメラ・高橋 由二)

 第69回有馬記念・G1 (22日、中山)の追い切りが18日に行われ、今回がラストランとなるドウデュースは滋賀・栗東トレーニングセンターのDP(ポリトラック)コースで併せ馬。馬トク取材班の最高評価「G」がつく絶好の動きで、見守った主戦の武豊騎手(55)=栗東・フリー=も「勝って終わりたい」と有終Vへ自信をにじませた。枠順は19日、公開抽選会で決定する。

 冷え切った早朝に流星が現れた。ドウデュースは低い重心のまま、一切ぶれずに疾走。洗練された馬体に、躍る脚さばき。ゴールまで一直線だった。フィニッシュ後、馬上で前川助手は「楽しかったな」。思い出が、頭の中を駆け巡った。「めっちゃ良かったな。気持ち良かった」。現役最後の追い切り。愛馬の背中越しに、爽快感をかみしめた。

 過去のG15勝と同様に、当週の追い切りは栗東・DPコース。バズアップビート(2歳未勝利)を3馬身追走した。2歳から教え込んだ成果で、馬の後ろではピタリと折り合う。今秋の3戦で最長となる2500メートル戦に備え、リラックスした走りを意識した。前に追い付きそうになっても、前川助手が声をかければしっかり我慢。ラスト200メートルは11秒5(1000メートル65秒4)で併入した。

 見届けた友道調教師は「余力十分で、今日も良かった」と連戦の疲れを感じさせない姿に満足げ。引き揚げる相棒を出迎えた武豊は「友道先生と『順調にきましたね』と話しました。担当の前川さんにも『完璧です』と言われたので、良かったな」とやりとりを明かした。陣営で、満点評価を共有した。

 2~5歳に毎年、G1を計5勝した厩舎の大エース。友道師は「20年以上調教師をやってきたけど、こういう成長をしてくれる馬は初めて」と感嘆する。22年日本ダービーは特別で「武豊で勝てたダービー馬というのが、一番いい思い出」。別れの実感が湧いたのはジャパンC勝利後で「半分さみしい、半分ありがとう」と思いをはせてきた。

 武豊も思いは同じ。「50歳を過ぎて、すごくいい馬に巡り合えて、楽しかったし励みになった」と言葉を紡いだ。有馬記念では90年オグリキャップ、06年ディープインパクト、17年キタサンブラックと過去3度、有終Vを達成しているレジェンド。「勝って終わりたい気持ちが強い」と自らを奮い立たせた。

 ファン投票は歴代最多の47万8415票。名実ともに、スターホースとなった。秋古馬3冠を達成すれば史上3頭目。友道師も調教師では史上3人目の偉業になるが「私の記録は全く関係ない。ドウデュースが達成できれば」。ドウデュースが、3年3か月の競走馬生活で、最も輝く瞬間が近付いている。(水納 愛美)

 ◆武豊に聞く

 ―ドウデュースの引退が決まってからの心情は。

 「ラストシーズンにかける思いは、すごく強いものがあった」

 ―勝利だけでなく、何度も負けを経験した。

 「一緒に戦ってきた立場なので、すごくうれしいこともあったが、悔しいことも何度も何度もあった。でも、そのたびにまた勝ってくれて、すごい馬。勇気をもらえることが多かった」

 ―印象的なレースは。

 「ダービーもうれしかったし、去年の有馬記念も、騎手人生の中で大きいレース」

 ―ラストランの手綱を任される責任感は。

 「大役だと思う。不利のない、悔いのないレースをしたい」

 ◆有馬記念の連覇 スピードシンボリ(69、70年)、シンボリルドルフ(84、85年)、グラスワンダー(98、99年)、シンボリクリスエス(02、03年)の4頭。

 ◆秋古馬3冠 一般的に天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念の3競走を指す。同一年に全勝したのは00年テイエムオペラオーと04年ゼンノロブロイの2頭のみ。

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