◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
「目は口ほどに物を言う」ということわざがある。誰しもが日常で、そう思わされることが多いのではないだろうか。競馬で走るサラブレッドは動物なのでしゃべらないが、目から読み取れることは多いように思う。
私は競馬専門放送のグリーンチャンネルでレースのパドック解説者として出演させてもらっている。中央競馬で現役最多の1092勝を挙げている国枝栄調教師(69)に、競走馬のチェックポイントについて聞く機会があった。歩き方や馬体は個体差があるため一概には言えないとしたうえで、「目がキョロキョロ、おどおどしているのは気になるところだよな。みんなと見るところは一緒だよ」と明かす。レース前の緊張感のなか、馬が普段と違う環境に置かれるため、名伯楽も“アスリート”のメンタルの変化を重要な点とみているのだ。
競走馬の資質を知る参考にもなるという。「“目は心の窓”と言うだろう」。国枝師が過去に手がけた名馬の一頭に、芝G1で史上最多9勝のアーモンドアイがいた。「美人とされる顔の目の形」という馬名の由来の通り、自信に満ちた澄んだ目が印象的だった。その強さは、改めて偶然の産物ではなかったと思わされる。
実は私も「いい目をしとるけぇ」と言われたことがある。野球担当だった駆け出しの入社2年目のこと。元広島監督で当時は本紙評論家だった達川光男さんとキャンプ取材で一緒になり、居酒屋でそう励ましてもらった。きっと失敗続きで、余裕のない私を見かねての優しい言葉だったのだろう。個性派で愛された名捕手の鋭い観察眼に感服した。(中央競馬担当・坂本 達洋)
◆坂本 達洋(さかもと・たつひろ) 2006年入社。野球担当や販売を経て、17年から中央競馬担当。好きな競馬場(街)は札幌と新潟。