矢作芳人調教師のあくなき向上心が生み出す国境なき思考回路に学ぶ「攻め」の姿勢

矢作芳人調教師
矢作芳人調教師

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 50歳目前になったが、プライベートで海外に一度も行ったことがない。記者生活25年以上にもなる仕事では何度も行っているが、海を越えると慣れない空間に戸惑ってばかり。小さくなっている自分が情けなくなる。

 そんな記者がよく話を聞くのが矢作芳人調教師(63)だ。今週末の22日には世界最高額の優勝賞金1000万ドル(約15億7000万円)がかかったサウジCにフォーエバーヤングを送り出す。今まで国内でも6度の全国リーディングを獲得しながら、海外では23年のこのレースをはじめ重賞14勝。6勝で3人が並ぶ2位に圧倒的な差をつけ、競馬界では「世界のYAHAGI」と呼ばれる。

 海外へ挑む意義を聞いたことがある。「スポーツは世界で取ってこそだろう」と前置きした後、「俺はかなり壁が低いというか、日本でも海外でも馬に合った賞金の高いレースがあるから、取りにいっているだけ。当然の話だよ」と返ってきた。

 競馬の海外遠征は主催者からの招待レースでない限り、2000万~3000万円の費用がかかる。それを馬主に負担してもらう責任に加え、海外の慣れない環境下での調整。半端ないプレッシャーとの闘いだが、矢作師は熱い口調で語る。「レースに出走させないことには何も始まらないからね。目標設定は常に高く設定しないと、と思う。それがたとえ(目標に)到達しなかったとしても、かなりの高いレベルまで行けるんだ」

 あくなき向上心が生み出す国境なき思考回路。一方、記者は現場が長くなればなるほど、取材や原稿で守りに入っていると思うことが増えた。第一人者からの刺激を全身で感じ、自分自身をまだまだアップデートしていきたい。(中央競馬担当・山本 武志)

 ◆山本 武志(やまもと・たけし)1999年入社。ディープインパクトが3冠を達成し、矢作厩舎も開業した2005年から中央競馬担当。

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