15年前のバレンタインデーに見せた神騎乗 「ジャンプ界の牛若丸」障害重賞21勝の白浜雄造騎手が引退 

白浜雄造騎手
白浜雄造騎手

 障害の名手、白浜雄造騎手=栗東・フリー=が今月いっぱいで引退することが、11日に発表された。22年8月の小倉サマーJで落馬負傷した際に頭部外傷などの大けがをし、復帰はかなわずステッキを置いた。栗東トレセンでよく話を聞いた障害ジョッキーがまた1人引退することを、とても寂しく思う。

 障害130勝の白浜騎手は「重賞の勝利」にこだわっていた。歴代4位の障害重賞21勝で、JG1は2005年中山大障害(テイエムドラゴン)、09年中山グランドJ(スプリングゲント)の2勝。とにかく淀の障害に強く、京都ハイジャンプで歴代最多の5勝、京都ジャンプSで歴代最多タイの4勝を挙げた。

 引退のニュースが出たとき、Xでは2010年2月14日の障害未勝利(スプリングカエサル=2着)を思い返していたファンが多かった。スタンド前のいけ垣の障害の着地でつまずき、落馬寸前になるアクシデント。衝撃に耐えて何とか体勢を立て直したが、何か様子がおかしい。鞍がずれてしまい、両足のアブミ(鞍の両側に下げ、騎乗時に足を乗せるための馬具)を外して乗る形になっていた。

 両足を固定させず、背筋をピンと伸ばして馬の背と垂直にまたがる「天神乗り」と呼ばれるスタイルで、残る障害6つを飛越した。現地で見ていたが、怖くて仕方がなく、落馬しないで! と祈り続け、ヒヤヒヤしながらの観戦。大歓声に迎えられ、2着でゴールした瞬間はジョッキーのバランス感覚ってスゴすぎる! と感動するばかりだった。

 「危ないのでアブミを外して乗りました。1番人気だから落ちるわけにはいかなかった。馬に感謝です」と当時、振り返った白浜騎手。ちょうど15年が過ぎたが、あのとき感じたスタンドの大きな盛り上がりを懐かしく思う。

 京都で輝いた白浜騎手といえば、牛若丸ジャンプSで2011~14年の4連覇を含む5勝したこと。14年に5番人気のトウショウデザイアを勝利に導き、翌週に栗東で祝福の声をかけると「今年も勝つことができました。『ジャンプ界の牛若丸』と呼んでください」と言ったときの誇らしげな表情は、本当にカッコ良かった。

 危険と隣り合わせの障害レースを見て、いつも願うのは全ての人馬が無事にゴールに入ること。安全に競馬が行われ、白浜騎手のような、ジャンプ界の第2の牛若丸が出てくることを心から望んでいる。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

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