競走馬の障害試験って何? 合格基準は? 馬券に直結させる方法は?

栗東トレセンで障害試験に臨むマドリードカフェ
栗東トレセンで障害試験に臨むマドリードカフェ

 競走馬がレースに出走するためには、ゲート試験に合格することが条件。同じように、障害レースに出るためには、障害試験に合格しなければいけない。意外と知られていない障害試験について、滋賀・栗東トレーニングセンターで取材をしてきました。

 障害試験が課せられるのは障害レースに未出走の馬だけではない。障害に出走経験があっても、休養などで1年以上障害レースに出ていない馬(平地レースのみに出走していた馬も含む)、障害試験に合格してから1年以上障害レースに出ていない馬も対象。これらの馬は、毎週木曜に実施される障害試験に合格しないと、障害レースには出られない。

 合否の基準は時計、飛越、流れの3点。まずは「時計」について。栗東トレセンの場合は、1周1450メートルのAコースにはグリーンウォールが1つ、いけ垣が3つ、水濠(すいごう)が1つ、竹柵が1つ設置されている。この6つの障害をクリアし、Bコースのゴール板までの1600メートルを2分以内での通過が条件。1頭だと時計が出ない馬がいるため、2頭で受験することも可能だ。

 次に「飛越」と「流れ」。試験官の栗東トレーニングセンター公正室・技術参事役の高木辰夫さんは「障害を前にして、極端にスピードダウンする馬は不合格にします。我々は『詰まる』とよく言いますが、レースでそうなると後ろの馬がぶつかってしまい危険ですから」。スムーズに流れに乗って飛越することが求められる。もちろん、真っすぐな飛越も安全なレースを行うためには必要で、内でも外でも2頭分「斜飛」してしまう馬もアウトになる。

 8月9日に受験したのは6頭。各ジョッキーごとに振り分けられた染め分け帽をかぶって試験に挑む決まりがある。赤と青の染め分け帽をかぶった熊沢重文騎手が騎乗していたのはマドリードカフェ(牡7歳、栗東・荒川義之厩舎)。障害に転向後、3連勝で昨年5月の京都ハイジャンプ・JG2を制したが、脚部不安で1年以上も休養していた。すでにゲート試験はパスしており、復帰に向けての最終関門がこの障害試験だった。

 マドリードカフェは試験では、1か所だけ遠い位置から飛越する場面があったが、何ごともなかったかのようにクリア。普通の馬だと障害を引っかけてしまう可能性があるが、重賞ウィナーの底力で軽々と飛び越えていった。「これだけの実績がある馬。さすがだね。何も問題ないよ」と熊沢騎手は納得の表情。試験を無事にパスし、新潟ジャンプステークス・JG3(8月25日、新潟)での復帰に大きく前進した。

 さて、障害レースで馬券をゲットするには。初障害の馬についてジョッキーに聞くと、ほとんど「使ってみないと分からない。まずは無事に」というコメントが出てくる。これは、まさに本音。障害界で無双状態だったオジュウチョウサンでも初障害は14頭立てで14着と惨敗していた。それほど初障害は難しい。1、2頭で行う障害試験では自分のリズムで運べるが、10頭以上で目まぐるしく展開が動くレースでは、簡単には自分のリズムで運べない。障害試験の時計は参考にはなるが、実戦の結果に結びつかない場合もある。

 その初障害で勝つ馬は先々まで注目を。実際に初障害で8馬身差の圧勝をしたマドリードカフェは無傷の3連勝で重賞を勝った。馬券的に妙味があるのは初障害で着順の数字は悪くても、スムーズに流れに乗ってそれなりに見せ場をつくっていた馬。そう思って研究、取材をしているが、なかなか的中しないのが競馬。今年4月の福島、入障初戦12着のあとの2戦目で変わり身を見せての勝利で、単勝151・2倍の大波乱を巻き起こしたニシノスマッシュ(牡4歳、美浦・根本厩舎)のような高配を、いつか当ててみたいと思うんですけどね。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

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