【オークス】無敗の2冠を狙うデアリングタクトに育成調教のパイオニアファームがエール 当歳セレクトセール引き取り手なしから1歳1200万円で落札

デアリングタクト(デアリングバードの2017)のセレクトセール2018上場時(C)日本競走馬協会
デアリングタクト(デアリングバードの2017)のセレクトセール2018上場時(C)日本競走馬協会

◆第81回オークス・G1(5月24日・芝2400メートル、東京競馬場)

 史上7頭目となる無敗で桜花賞を制し、オークス(24日、東京)で63年ぶりの無敗2冠を目指すデアリングタクトは、当歳のセレクトセールで引き取り手のなかった馬だった。生産した北海道日高町の長谷川牧場が、苫小牧市で育成・調教を行うパイオニアファームへ送り出し、光る素質が磨かれて翌年2度目の上場で1200万円で落札された。両牧場とも、快挙に挑むエピファネイア産駒に北の大地からエールを送っている。

 桜花賞馬のデアリングタクトは2年続けてセレクトセールに上場。祖母のデアリングハートは重賞3勝、桜花賞3着という背景がありながら、当歳の17年は買い手がつかず主取りになっていた。生産した長谷川牧場は、1歳になった18年4月13日から調教、育成のため、苫小牧市のパイオニアファームに送り出すことを決断。その結果、368キロだった馬体は上場時には428キロと大きく成長を遂げ、1200万円でノルマンディーファームに落札された。

 基礎をつくり上げたパイオニアファーム代表の佐久間貴子さんは、「当歳セールの当日にお手伝いをしたのですが、最初に見たときの印象は『She looks perfect』。ですから主取りになったときは非常に驚きました。私たちのファームに来たときはいくぶん小柄でしたが、均整が取れてバランスのいい馬。いつも自信があり新しいことを素直に受け入れ、吸収するガッツがありました。新しい環境でも動じることがありませんでした」と光るものを随所に見せていた。

 自然放牧をしつつ、各種の運動などでセールのための馴致(じゅんち)。初めてのトレッドミル(馬用のランニングマシン)でも、タクトは動じず素直にメニューをこなした。運動、カイバの量を細かく調整し、準備を進めていった。

 桜花賞は育成、調教の実務を担当する夫のエイドリアンさん、スタッフたちと一緒に牧場でテレビ観戦。佐久間さんは「それぞれがエキサイトして応援の言葉を送っていました。ゴールした瞬間、ボス(夫)の興奮した姿に皆さらに興奮が高まったようです。関わった全ての方によるチームジョブだと思います。そして彼女に深く感謝したいです。オークスでも彼女の走りが楽しみです」とエールを送っていた。

 現在、同ファームには全妹(19年生まれ、父エピファネイア)がいる。選定されれば今年のセレクトセールで上場予定で、偉大な姉の後を追う。(内尾 篤嗣)

 ◆パイオニアファーム 競走馬の育成、調教、休養(リハビリ)などを行う施設で、99年に前身のサクセスフル・サラブレッド・マネジメントとして北海道早来町(現在の安平町)に開場。11年に現在の苫小牧市美沢に移転。周回コースは全長900メートル、坂路は400メートル。ハイスピードトレッドミル(3基)などを設置。16年京都新聞杯など重賞4勝のスマートオーディン、17年レパードS優勝のローズプリンスダム、14年京都新聞杯Vのハギノハイブリッドなども手がけた実績がある。

 <生産の長谷川牧場・長谷川文雄代表も2冠を期待>

 デアリングタクトを生産した北海道日高町の長谷川牧場は1948年に創設された。約25ヘクタールで繁殖牝馬は8頭。かつて10年に小倉大賞典を制したオースミスパーク、93年のマイルCSで2着のイイデザオウを送り出した実績があるが、G1制覇は初めてだった。

 現代表の長谷川文雄さんが母のデアリングバードを14年のジェイエス繁殖馬セールで360万円で購入。「小さな馬だったけど、血統が素晴らしかった。自分のような生産者は血統、成績、馬格のどこかに目をつぶらないと買えません。最後に必要なのは度胸です」と当時を思い起こした。

 エピファネイアを配合して生まれた娘がクラシック制覇。長谷川さんは「(体は)大きくなかったけど、皮膚が薄くてかん性の良い馬でした。桜花賞を勝ったことにはびっくり。それ以外に言葉が見つかりません。もちろんオークスも頑張ってほしいです」と2冠目を期待していた。

最新記事

さらに表示
ニュース検索
馬トク SNSアカウント
  • X (旧Twitter)
  • facebookページ
  • Instagram
  • LINE公式アカウント
  • Youtubeチャンネル