24年にルーキーとして87年以降、歴代5位の48勝を挙げた高杉吏麒(りき)騎手(19)=栗東・藤岡厩舎=が、インタビューで2年目の飛躍を誓った。昨年は全国リーディング19位。重賞やG1戦線での活躍に加え「もっと大人になりたい」と、20歳になる25年シーズンを見据える。将来的には「凱旋門賞を勝ちたい」と目標を掲げる19歳に、今後の課題から私生活までたっぷり聞いた。(取材・構成=山本 理貴)
24年は新人騎手では5位の48勝を記録した高杉。競馬学校在学時に立てた40勝という目標を達成し、デビューから2週間で金鯱賞のワイドエンペラー(6着)で重賞初騎乗も果たした。師匠の藤岡調教師をはじめとした厩舎スタッフに支えられながら、一歩ずつ階段を上っている。
「まだまだ慣れが必要かなと思うことはありますが、師匠の藤岡先生にいい馬にたくさん乗せていただいて、結果も出させてもらっていますし、すごくいい経験をさせてもらっているなと思います。デビューから2週間で重賞に乗せてもらえたことはすごく貴重な経験でした。先生や厩舎のスタッフの人たちのおかげで成長できていると感じます」
1年目から北海道遠征も経験。15勝を稼ぎ、一時はリーディング争いにも加わった。そんな環境に身を置いたからこそ、得られたものも多かった。
「滞在という形だったので、たくさんの馬の調教に乗る時間がありました。他厩舎の馬にもまたがって、どう競馬に向かっていくのかや、調教のつけ方などレース以外の部分でもいろいろと考えることができました」
24年は新人ではトップの成績を残したが、2年目のさらなる飛躍に向け、冷静に課題を分析している。
「自信があるところは特にないんです。強いて挙げるなら一鞍一鞍、一生懸命に乗るというのは意識していますね。もっと上手くならないといけない。技術的な面で言うと、馬を御す、動かすという基本的なところもまだまだ足りないです。レースの事前準備だったり、展開を読んで、『この場合は自分はどうしたいか』ということを考えながら乗れるようにならないと、と思っています」
25年は20歳になるシーズン。レースでの目標だけでなく、立派な大人として身近な先輩を手本に、人間性の部分でも成長していきたいという。
「今年のうちに減量を取りたいですし(JRAと指定の地方などのレースで101勝)、減量のない特別レースでもしっかり勝っていきたい。重賞、G1、そういう舞台でも乗せていただけるように、勝てるように頑張りたいです。そして将来的には、昔から憧れている凱旋門賞を勝ちたいですね。また、人としても、もっと大人になりたいなと思っています。いつもお世話になっている藤岡佑介さんは、自分の考えていることを言葉で説明するのがすごく上手で。普段から競馬について考えていらっしゃるのが話していてすごく伝わってくる。そんなふうになりたいなと思います」
2年目以降は、生活面で自由にできることが増える。髪形、車…。19歳らしい無邪気な笑顔で私生活の展望を話してくれた。
「1年目は先生に伸ばすのはダメと言われて、ずっとボウズだったんですが、2年目は勝手にしろって感じですね。伸ばしたいといえば伸ばしたいですよ。ボウズだと小学生にたぶん見えちゃうので(笑)。車に乗るのも1年目はダメで、『2年目からな』と。『1年目が終わったらどんな車でも乗ってええぞ!』と言われています。そこまで詳しくはありませんが、車は好きですね。ゆくゆくは1台、SUVを買って、2台目でスポーツカーを買いたい。もうがっつりスポーツカーって感じの車に乗りたいです(笑)」
【強い覚悟感じた】下の名前の読みが同じで同年デビューの新人という2つの共通点から、勝手に親近感を抱いてよく取材をさせてもらっているが、話していると「この世界で生き抜いていく」という強い覚悟を言葉の端々から感じる。普段は19歳らしいフレッシュな受け答えだが、時折眼光が鋭くなり、言葉に力がこもる瞬間がある。
競馬に対する飽くなき向上心は、毎日の調教に向き合う姿勢からも伝わってくる。自厩舎の馬以外にもたくさんの馬の調教に精力的にまたがり、調教師、スタッフと話し込む。自分の長所を尋ねた時に一生懸命という言葉が出たが、客観的に見ても、本当に競馬が好きだということが伝わってくる。
自厩舎で騎乗して未勝利戦を勝ったノラリクラリとの撮影の際、腕をかまれ、「痛い、痛い」と言いながら愛おしそうに頭をなでる笑顔が印象的だった。持ち前のひたむきさを武器に、これからも勝ち星を積み上げていってほしい。
◆高杉 吏麒(たかすぎ・りき)2005年9月28日、滋賀県生まれ。19歳。24年3月に栗東・藤岡健一厩舎所属でデビューし、同23日の中京6R(コムルヴァン)で初勝利。JRA通算456戦48勝。同期デビューは栗東の柴田裕、橋木、吉村、美浦の石神道、大江原比、坂口、長浜。165センチ、48・3キロ。