【05年天皇賞・秋】ヘヴンリーロマンス「伝説の敬礼」激しい気性のはずが「なぜかあの時はじっと」

ヘヴンリーロマンスで天皇賞を制し、観戦した天皇、皇后両陛下へ向かい一礼する松永幹夫騎手
ヘヴンリーロマンスで天皇賞を制し、観戦した天皇、皇后両陛下へ向かい一礼する松永幹夫騎手

 秋の天皇賞が現行の2000メートルになって以降、牝馬の優勝は6度。97年に重い扉をこじ開けたエアグルーヴを筆頭に、ウオッカ、ブエナビスタ、アーモンドアイと、時代を画した名牝ばかり。その中で異彩を放っているのが、14番人気で鮮やかな大駆けを決めたヘヴンリーロマンスである。

 05年、日本競馬の歴史に長く語り継がれる天覧競馬が行われた。日本騎手クラブの関西騎手会長の松永幹夫(現調教師)はレース前の大役に、極度の緊張を感じていた。東京競馬場のメモリアルスタンドで、天皇、皇后両陛下をお迎えした。手綱を執るヘヴンリーロマンスの出来には手応えがあった。それでも「とにかく無事にレースをという気持ちが強かった」。騎手クラブの役員として、スムーズなレースを意識した。

 絶好の1番枠からインで脚をためていたヘヴンリーロマンスは直線、まるでスローモーションを見るように、一頭、また一頭と抜き去って行くと、先頭に立っていた。「激しい気性でうるさい馬です。それが、なぜかあの時はじっとしていました」。美しいと表現された伝説の敬礼につながった。

 大舞台と無縁だったヘヴンリーロマンスは、その夏のクイーンS2着から連闘で臨んだ札幌記念を制し、この舞台へつなげた。実績馬が実力を発揮している秋の盾で、上がり馬の大仕事は痛快だった。一瞬の輝き。この季節が来ると思い出す。(編集委員・吉田 哲也)

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