◆第60回七夕賞・G3(7月7日、福島競馬場・芝2000メートル)
今週末に行われる2重賞の出走馬が4日、確定した。第60回七夕賞・G3(7日、福島)に今年3月に開業した千葉直人調教師(37)=美浦=が、厩舎初勝利をもたらした「縁」深いセイウンプラチナで重賞初挑戦する。今回は初めてチークピーシーズを着用。「完璧」という仕上がりでタイトルを狙う。
見えない力に導かれるような重賞初挑戦だ。騎手から調教助手を経て今年3月に開業した千葉調教師が騎手時代、初めて重賞で騎乗したのが七夕賞(08年アクティブアクト=11着)だった。「ジョッキーで結果を出せなかったぶん、調教師で結果を出せればと思っています」と言葉に力を込めたが、送り出すセイウンプラチナも不思議な縁でつながっている。
競馬を初めて観戦した99年の札幌記念に勝ったセイウンスカイ(98年皐月賞、菊花賞V)が、騎手を志すきっかけだった。「セイウン」の冠で知られる西山茂行オーナーの馬には「騎手時代も乗せていただきましたし、鈴木伸厩舎での助手時代もお世話になった」という。「それで厩舎の初勝利も重賞初挑戦も西山オーナーの馬ですから、何か感動しますよね。縁があるというか」と感慨深げだった。
4月に3勝クラスを勝っての参戦。もちろん出走させるだけで終わるつもりはない。今回は初めてチークピーシーズを着用する。「逃げ馬ですし、後ろからのプレッシャーに敏感にさせたかった。今回は距離も短くなるので。調教で試した感じでは原騎手から『いいかもしれない』と言っていただけましたし、うまくいってくれれば」と楽しみにしていた。
3日の最終追い切りは美浦・Wコースで5ハロン64秒8―11秒2の好時計をマークして自己ベストを更新。「完璧に仕上がった感じがするので、あとは無事に競馬までもっていければ」と抜群の動きに納得の表情。まだ開業して間もないだけに、「こういう馬がいてくれると、『重賞に使えるぞ』と厩舎全体も盛り上がりますからね」と雰囲気も最高潮だ。
「調教師は最善を尽くすことが仕事ですから、毎日緊張しています。スタッフや馬主さんや騎手とコミュニケーションを取るなかで一日も休めません。もっと余裕あるかなと思ったんですが」と笑い飛ばしたが、これまで丁寧に、真摯(しんし)に馬と向き合ってきたからこそ、たどり着けた重賞の舞台だ。(西山 智昭)
◆千葉 直人(ちば・なおと)1986年7月30日生まれ。北海道出身。37歳。06年に騎手デビューして同年12月に初勝利。JRA通算984戦24勝。12年11月の引退後は藤原辰雄元調教師、鈴木伸尋調教師のもとで調教助手として経験を積み、23年に調教師免許を取得。24年3月に開業し、7月4日現在でJRA通算60戦4勝。