禁止薬物問題でJRA調査結果発表 工場内別ラインのカカオ粉じん混入が原因

JRA本部での会見冒頭で頭を下げる横田貞夫馬事担当理事(右)、臼田雅弘広報担当理事(中)、松田芳和馬事部部長補佐
JRA本部での会見冒頭で頭を下げる横田貞夫馬事担当理事(右)、臼田雅弘広報担当理事(中)、松田芳和馬事部部長補佐

 JRAは5日、東京都内と大阪市内で記者会見を開き、6月15、16日の中央競馬で、禁止薬物テオブロミンを含んだ飼料添加物「グリーンカル」を摂取した可能性がある156頭が競走除外となった問題についての調査結果と改善策を発表した。

 販売元の日本農産工業(株)への調査の結果、テオブロミンが混入したのは、日本農産の孫請けで、グリーンカルの製造に必要な原材料の1つ、アルファルファミール(牧草粉砕品)を製造する工場(日本農産の子会社で製造元であるニッチク薬品工業の下請け)。17年1月から同じ建屋内の別の製造ラインで、テオブロミンを含むカカオ豆副産物が粉砕されており、その粉じんがアルファルファミールに混入したと特定した。

 また、JRAが求める「検査は同一の原材料を用い、一定の期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品(ロット)毎に実施」(飼料添加物の薬物検査実施要領)という考え方を、日本農産が誤った解釈でとらえていたことも判明。JRAは製造単位ごとの検査を求めていたが、日本農産は「産地や入手時期が異なっても、原材料名が同じであれば同一のもの」との解釈で同じロットとみなし、検査が徹底されていなかった。

 小売店のJRAファシリティーズ(株)、検査機関の(公財)競走馬理化学研究所にも調査し、今後の再発防止策を明らかにした。会見に出席した横田貞夫馬事担当理事は「日本農産工業に対しては、製造単位ごとの検査を義務づける。陰性であることを確認できた上で販売ルートに乗せる。(薬物検査結果は)私どもでもチェックできる態勢にする」と話し、厳重なチェックとともに、情報共有も徹底することを示した。

 <競走除外156頭への補償金は総額4~5億円>

 JRAは5日、グリーンカルを摂取して競走除外となった156頭の馬主、調教師、騎手、厩務員らの関係者に損害を補償する目的として、交付金を支払うことを明らかにした。一律ではなく、出走を予定していたレースの条件などに応じて支払う仕組みで、「競走の3着相当額、加えて特別出走手当」と臼田雅弘広報担当理事。総額4~5億円を見積もっている。

 また、156頭には次走の優先出走権(2か月間)が与えられたが、地方競馬を含めて先週末までに132頭が権利を行使。残りの24頭のうち9頭は今週に出走予定で、引き続き15頭が優先出走権を保持している。

 <禁止薬物問題の経過>

 ▽6月14日 夕方、飼料添加物「グリーンカル」の一部の製品に、禁止薬物テオブロミンが含まれていることが判明。

 ▽15日 早朝、禁止薬物を摂取した可能性がある15、16日の東京、阪神、函館の出走予定馬のうち156頭を競走除外にすると発表。

 ▽16日 除外となった馬に次週の優先出走権を与えるとし、22、23日の出走予定馬365頭に薬物検査を実施すると発表。

 ▽17日 農水省が原因究明と再発防止をJRAに指示。

 ▽18日 出走予定馬365頭の検査が終了し、全頭が「陰性」。競走除外馬156頭に与えた次走優先出走権の期間を8月11日まで延長すると発表。

 ▽24日 大阪市内の定例記者会見で「チェックシステムに不十分な点があった」と認め、後藤理事長らが謝罪。「原因の特定と、再発防止策の発表を早急に行う」と方針を示す。

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