【朝日杯FS 今週のキーマン】23歳前田幸貴オーナーがビアンフェでG1初制覇に挑戦 夢は「世界の大レースを全て取りたい」

23歳の前田幸貴オーナー(右)はビアンフェの主戦、藤岡佑とG1取りを狙う
23歳の前田幸貴オーナー(右)はビアンフェの主戦、藤岡佑とG1取りを狙う

◆第71回朝日杯フューチュリティS・G1(12月15日・芝1600メートル、阪神競馬場)

 第71回朝日杯フューチュリティS(15日、阪神)に4戦2勝のキズナ産駒、ビアンフェで臨む前田幸貴オーナー(23)は昨年のホープフルS、今年の皐月賞(ともにブレイキングドーン)に続く3度目のG1挑戦。父はノースヒルズの総帥、前田幸治氏。馬主になって2年あまりで重賞2勝。G1初制覇を目指す若きホースマンの思いを、内尾篤嗣記者が聞いた。

 ―前田幸貴オーナーはビアンフェで朝日杯FSに挑戦します。

 「初勝利のレース、函館2歳Sといい、素晴らしいスピードを持っています。京王杯2歳Sは2着で重賞連勝とはなりませんでしたが、休み明けでも崩れず、次につながる内容でした。本質的にはスプリンターと思いますが、マイルは2歳の今の時期なら克服できると思います」

 ―父はノースヒルズ代表の前田幸治氏、母は前田葉子氏(日本調教馬で初めて米国3冠にフル参戦したラニなどの馬主)。叔父に前田晋二氏(キズナや現2歳のコントレイルを所有)。競馬一族の出身として、馬主としての夢は?

 「日本のレースはもちろんですが、世界で凱旋門賞、ドバイ・ワールドC、米国のブリーダーズC、ケンタッキーダービーなど大レースを全て取りたいです。オーナーブリーダー(馬主兼生産者)のノースヒルズの理念は『チャレンジングスピリット~挑戦する心~』。父はその精神を人一倍持っていて、すごいパワーで日本の競馬を盛り上げてきました。父の教えを受け継いで、私も世界を舞台にチャレンジを続けていきたいです」

 ―競馬の好きなところは?

 「ドラマ、ロマンがあるところです。今まで重賞を2つ勝たせていただきましたが、ビアンフェの父キズナ、母ルシュクルは自分のファミリーが持っていた馬。その子供を自分が所有して、重賞で活躍できることに感無量の思いです。自分たちの牧場で生産して、代々受け継いできた血統の馬でG1に挑戦できることに、これ以上ない喜びを感じます」

 ―コンビを組む藤岡佑介騎手をはじめ年上のジョッキー、調教師と話すときに気をつけていることは?

 「騎手、調教師にかかわらず年長者とお話しするときは、ビジネスでも競馬でも礼節を重んじて失礼のないように心がけています。基本的に私がレース、調教について言うことはありません。皆様はプロフェッショナルですからね。藤岡佑介騎手は大舞台で思い切ってレースをする印象があります。この馬に普段の調教でもよく接してくれているので、G1でもきっちり力を引き出してくれると思います」

 ―最後に意気込みを。

 「今回の朝日杯FSで優勝すれば、最年少G1オーナーだと聞いています。父と武豊騎手のコンビがあるなら、私と若い世代のジョッキーで、日本の競馬を盛り上げていきたい気持ちが強いです。競馬はブラッドスポーツで、系譜を重んじるものですが、歴史や伝統を受け継ぎつつ、新しい風も入れたいです。そして朝日杯以外にも年末は中山大障害にディライトフル、有馬記念を目指すスカーレットカラー、ホープフルSにはコントレイルと、『チームノースヒルズ』にとって楽しみなレースがあり、先陣を切ってビアンフェがいい競馬ができるように、と願っています」

 ◆個人馬主登録の要件 21歳以上など複数項目で審査基準が設けられている。所得・資産関係では、今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではない)が過去2年いずれも1700万円以上あることに加え、継続的に保有する資産額が7500万円以上必要。

 ◆前田 幸貴(まえだ・こうき)1996年6月6日生まれ。大阪府出身の23歳。幼少期から馬に慣れ親しみ、慶大在学中に馬主資格を取得。2年あまりで今年のラジオNIKKEI賞(ブレイキングドーン)、函館2歳S(ビアンフェ)の重賞2勝。

 <取材後記> ノースヒルズ代表で父の前田幸治氏はエネルギッシュで、持ち前のリーダーシップで組織を引っ張るタイプ。幸貴氏に初めてインタビューしたが、23歳とは思えないオーラと、パワーに満ちあふれる姿は父・幸治氏と同じように感じた。

 調教師や騎手、牧場スタッフからの厚い信頼は、気さくななかに見せる丁寧な応対にうかがえた。親交の深い三浦皇成騎手は「幸貴さんが16歳のときからの付き合いで兄のように慕ってくれ、かわいい存在でありながら頼もしく思います。夏にレザネフォール(牡2歳、栗東・池江厩舎、7月札幌で新馬勝ち)で勝ったときは、こみ上げるものがありました」と格別な一勝を振り返っていた。

 トランセンドが2着惜敗したドバイ・ワールドCを現地で見て、世界一の馬をつくろうとオーナーの道を志したのは14歳のこと。父の願いは「まだ誰もやってないことを成し遂げ、真のホースマンになってほしい」。諦めずに突き進む熱いスピリットを継承し、ゆくゆくは日本競馬の悲願を達成してほしい。(内尾)

最新記事

さらに表示
ニュース検索
馬トク SNSアカウント
  • X (旧Twitter)
  • facebookページ
  • Instagram
  • LINE公式アカウント
  • Youtubeチャンネル