【こちら日高支局です 古谷剛彦】馬の見方教わったホッカイドウ競馬・林和弘調教師へ…感謝

林和弘調教師が通算1000勝を達成した時のウンの口取り式(21年6月24日)
林和弘調教師が通算1000勝を達成した時のウンの口取り式(21年6月24日)

 昨年の「JBC2歳優駿」初代王者で、今年の道営3冠馬となるラッキードリームなどを育て上げた、ホッカイドウ競馬の林和弘調教師が4日に57歳で亡くなった。18年から北海道調騎会会長を務めていた。

 林師は、33歳の若さで97年4月に開業。99年の「道営記念」をスズオールマイティで重賞初制覇を飾り、03年「平和賞」で南関東遠征での重賞勝ちを果たすなど、存在感を増した。05年バンブーボカ、11年ショウリダバンザイ、14年ウルトラカイザー、19年リンノレジェンドでも「道営記念」を制したが、中央や南関東から移籍した馬での優勝が目立った時代に、ウルトラカイザーを除く4頭は、道営デビュー馬でグランプリホースに導いた。ウルトラカイザーも、佐賀デビューで脚部不安でトラックでの調教が難しくなり、屋内坂路ができた門別で再起を期し、頂点に立った経緯がある。

 林師と私では、11歳も年が離れているが、道営の調教師で大御所が多かった時代、まだ調教師としてキャリアが浅かったこともあり、気さくに声を掛けてくれた。私にとって、馬の見方を教えていただいた数人の一人だが、一番記憶に残っているのは、09年にデビューしたゴーゴーアラシという馬だった。父である正夫氏の所有馬で、娘さんが嵐のファンだったこともあり名付けられた。前年のオータムセールで、100万円で落札されたが、膝が反った馬で、故障のリスクが大きいと個人的に感じていた。「トレーニングした時に、脚持ちますかね?」と、ストレートにぶつけてみた時、「そんなもん、やってみなきゃわからないさ」と笑いながら答えた。その後、「でもね、うちらの立場だと、誰もが見て素晴らしいと思う馬を一から育てる機会なんて、ほとんどないから、馬体が良いと思えば、血統を考えた時に完璧な馬なら100万円で買えるわけないんだから、チャンスだと思わなきゃ」と話した。ゴーゴーアラシは、2歳7月にデビューし、初戦は2着だったが、2戦目に4馬身差の圧勝を演じた。その後、剥離骨折をし、復帰することはなかったが、その勝利は個人的に強い思い出がある。

 また、社台レースホースの身で、中央未出走のマスクトヒーローが林厩舎に来て、楽々2連勝し、中央の舞台へ戻したことがある。初戦を楽勝した時、「道営記念に出れば、勝てるだけの力はある馬だから、中央に戻ればあっさり勝ち上がっていくと思いますよ」と話していた。そのような馬を、ずっとやってみたいと思う気持ちは?と聞いたが、

「その馬にふさわしいステージがあり、無傷で戻してあげるのも我々の仕事だから。無事に送り出せば、また良い馬と巡りあえることもあるし、まずは中央で頑張って欲しいと思う気持ちが先ですよ」と、サラッと答えた。

 「やってみなきゃわからん。林師からよく耳にした言葉だった。しかし、その言葉の中味は、職人らしい自信ものぞかせ、うまく言葉を引き出そうとする私も、深く馬を勉強するようになった。ラッキードリーム、リーチ、そしてリンノレジェンドなど、ホッカイドウ競馬を背負って立つ馬たちの背中を押してあげて欲しい。本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。(競馬ライター)

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