「常連」も絶賛 国際厩舎新設で示したジャパンC復活への確かな一歩

ジャパンC6着の外国馬グランドグローリー。それでも新施設効果で滞在中はノンストレスだったという(カメラ・池内 雅彦)
ジャパンC6着の外国馬グランドグローリー。それでも新施設効果で滞在中はノンストレスだったという(カメラ・池内 雅彦)

 11月27日に行われた第42回ジャパンC・G1は3番人気、ヴェラアズール(牡5歳、栗東・渡辺薫彦厩舎、父エイシンフラッシュ)がデビュー22戦目の初G1挑戦を制して頂点に立った。主役不在とも言われたレースではあったが、JRAにとっては世界の競馬関係者に「ジャパンCの価値」を再認識させる好機であり、新施設がもたらした様々な試みが成功裏に終わったのは一定の成果だろう。

 香港国際競走が行われるシャティン競馬場に私は行ったことはないが、当地で検疫を行うことができるという。そのため、近年の外国馬は11月末のジャパンCではなく、12月の香港を選択するケースが増えていた。だが、このたび東京競馬場内に国際厩舎が新設され、JRAの競馬学校(千葉県白井市)などで行われていた7日間の検疫が、今回から直接競馬場で行えることになった。

 昨年も来日(5着)したグランドグローリー(牝6歳、ジャンルカ・ビエトリーニ厩舎、父オリンピックグローリー)を管理するビエトリーニ調教師は「本当に素晴らしい。昨年来た時は競馬場じゃないところで検疫をした。今回はすべてがスムーズだ。我々が快適に生活できるようにオーガナイズされている」と絶賛した。昨年との違いを最も感じられる陣営だけにその言葉はお世辞には聞こえなかった。

 中でも評価が高かったのが24時間馬房の様子をモニタリングできるシステム。外にいても馬が今どういう様子かを確認できる。これは他の国でもなかなかないようで、ドイツのテュネス(牡3歳、ペーター・シールゲン厩舎、父ジュリアーニ)を管理するシールゲン調教師はレース当週の来日となったが、「ドイツにいるときから馬房(の映像)を通じてテュネスがどんな様子でいるのか見ていました」と喜んでいた。

 シムカミル(牡3歳、ステファン・ワッテル厩舎、父タマユズ)のワッテル調教師は金曜日の調教を終えた時点でジャパンCに向けた環境の面などに非常に満足していた。「今後ももちろん来たいよ。自分の調教する馬に出られるくらいの実力があったら。JRAが環境を整えてくれて(海外から馬が)来やすくなっている。今後は欧州から出走する馬が増えるんじゃないですかね」と来年以降の出走意思も見せた。2019年には外国馬未出走の“ピンチ”もあったジャパンC。だがそこからレースの価値を高めるためのたゆまぬ努力が状況を一歩改善させたと言えるだろう。

 当初、ここには凱旋門賞馬のアルピニスタ(牝5歳、マーク・プレスコット厩舎、父フランケル)が参戦の意志を表明していたが、負傷で断念。日本勢では、今年の日本ダービー馬ドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎、父ハーツクライ)はコンディションが整わずスタンバイを見送った。一方で、牝馬2冠のスターズオンアース(牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎、父ドゥラメンテ)は負傷がなければおそらく名を連ねていた。天皇賞・秋を制したイクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎、父キタサンブラック)は有馬記念に向かうことになったが、そうしたトップホースたちがもし走っていたら、さらに今年のジャパンCがさらに盛り上がっていたことは想像に難くない。

 来年から優勝賞金は、現状の4億円から1億円上乗せされて5億円になる。今回参戦した陣営から口コミなどで東京競馬場の良さが伝わればさらに多くの馬の参戦が期待できる。1レース以上の価値を持つビッグレースだったと言っていい。(中央競馬担当・恩田 諭)

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