育成牧場で輝く女性たち「毎日ずっと、馬に触っていられて最高です」

グリーンウッドで働く(左から)十河さん、有田さん、秋山さん、中元さん(吉田敏厩舎長提供)
グリーンウッドで働く(左から)十河さん、有田さん、秋山さん、中元さん(吉田敏厩舎長提供)

 近年の競馬において、欠かすことができない存在となった育成牧場。東西トレセン近郊に位置し、調教師も足しげく通い、トレセンに入厩させるタイミングなど、牧場スタッフと綿密に打ち合わせしている。

 滋賀県甲賀市のグリーンウッド・トレーニング甲南馬事公苑、通称「グリーンウッド」は全200馬房で、8つの厩舎から成る。吉田敏厩舎のスタッフの十河(とがわ)美咲さんは3年目。もともと動物関係の仕事に就きたかったが、グリーンウッドに来るまで馬に触ったことはなく、まずは乗馬の練習からスタートした。現役の競走馬に乗る前に結婚。乗るのはやめ、今はエサ作りを任されている。「体重が増えづらい馬が、食べてくれた時はうれしいですね。同じメニューだと飽きるので、毎週替えながら」と試行錯誤している。

 女性スタッフ同士も仲が良く、他厩舎の仲間を連れてきてくれた。中元雅望(まさみ)さんは4年目。たまたま家で競馬を見たことがきっかけで、幼少期から馬が大好きだ。「農業高校を卒業してすぐにここに来て、今は寮に住んでいます。毎日ずっと、馬に触っていられて最高です」と目を輝かせる。

 同じく4年目の有田みらいさんは、けがをしてから調教に騎乗できていないが、手入れやエサ作りに精を出し、その時を待つ。「以前、シュレンヌ(栗東・安田翔伍厩舎、父ディープインパクト、2戦1勝で引退)に乗せてもらっていたんですが、自分が乗った馬が活躍した時はうれしかったです。また、けがが治ったら乗りたいです」とやり甲斐を話す。

 上田一葉さんは北海道の牧場2か所で合計10年勤め、地元の京都に帰ってきて、グリーンウッドで5か所目という経験の持ち主。「うるさい子に色々と教えて、言うことを聞いてくれた時が良かったなと思います」。この世界20年目のベテランは、女性スタッフの心の支えになっている。

 吉田敏厩舎は今の時期、朝4時に集合して馬房の掃除や馬を洗い、6時半に調教がスタート。5人の騎乗スタッフが1頭1時間ずつ、9時半スタートまでの4回に分けて調教を行う。11時頃解散し、午後は1時半に集合して1時間ほどで終了。週1回、18~19時の夜飼い当番が回ってくるが、月6回の休みに加え、有給や特別休暇もある。2年目の秋山華蓮(かれん)さんは「まだまだ未熟で悩むこともたくさんありますが、色んな人に話を聞いてもらったり、アドバイスをもらいながら、馬に接しています。吸収できるものはすべて吸収し、もっともっと成長していきたいです。周りの環境にも恵まれ、毎日楽しく仕事しています!」と感謝する。

 43歳で働き盛りの吉田敏厩舎長は、大きな目標を掲げている。「女性スタッフと仕事をする機会がここ数年で増え、仕事への細やかな配慮や騎乗指導、説明をした際の吸収力、馬に対してのリテラシーの高さが感じられ、刺激をもらっています。ただ、女性厩舎長がいまだ出てきていないのも確かです。一日でも早く、女性初の厩舎長を誕生させ、女性スタッフがより良い職場環境で働き、輝いていただけるよう尽力したい」と覚悟する。

 ひと昔前までの牧場は、東西トレセンで厩務員になるための登竜門だったが、3月に新賃金体系の廃止を求めて厩務員の労組がストライキを起こしたように、今やJRAに入れば必ずハッピーという時代ではない。まずは牧場の門戸をたたく女性が増えることを願う。(中央競馬担当・玉木 宏征)

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