【イシゴーが見た】タイトルホルダー引退…今も思い出す蹄音と、ある調教師のひと言「ああいう馬が走る馬なんだよ」

皐月賞で2着したタイトルホルダー
皐月賞で2着したタイトルホルダー

 タイトルホルダーが有馬記念での引退を発表した。エフフォーリアの2着に健闘した21年皐月賞から3歳シーズンは常に本命を打ち続けた思い入れの深い一頭だ。その皐月賞で◎を託すきっかけとなったのが、別の取材中に耳にしたひと言だった。

 当時の美浦トレセンのWコースは一番外側に位置していた。私は調教スタンドの外でそのWコースを背にし、ある調教師が自身が管理する馬に対するコメントをノートに記していた。すると背後からドスン、ドスンと重厚なサウンドで蹄音を立て、こちらへ迫り来る馬が。するとその調教師は「今の馬、なんて馬?」と自身の話をさえぎって質問してきた。記者が「タイトルホルダーです」と返すと、「ああいう馬が走る馬なんだよ」と即答。自身は気になる一頭ながらも8番人気と伏兵扱いだったドゥラメンテ産駒を本命に推す迷いが消えた瞬間だった。

 G1・3勝目となった昨年の宝塚記念の前に、生産牧場である岡田スタッド代表の岡田牧雄氏に取材ができる機会に恵まれた。2歳の頃からケタ外れの心肺機能を持ち、自身が生産したマツリダゴッホ級のメニューをこなす同馬に対し「菊花賞を取る」と大いに長距離適性を感じ取っていた。

 その菊花賞は5馬身差のV。秋初戦のセントライト記念では不利が大きく大敗したうっぷんを晴らす快走に、最後の直線では鳥肌が止まらなかったことも記憶に新しい。その岡田氏は競走馬として長く活躍することを願っていたが、5歳シーズンを最後にターフを去ることになった。混戦模様の暮れのグランプリで有終の美を飾れるのかしっかりと見届けたい。(石行 佑介)

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