◆第30回シルクロードS・G3(2月2日、京都・芝1200メートル、稍重)
京都競馬場で行われた第30回シルクロードS・G3は、デビュー9年目の川又賢治騎手(27)=栗東・フリー=が騎乗した単勝9番人気エイシンフェンサーがV。人馬ともに初タイトルを手にした。
不穏な空気を一蹴(いっしゅう)するように、9番人気の伏兵が突き抜けた。直線入り口で前にいる6頭を射程圏内にとらえ、エイシンフェンサーは進撃を開始した。川又のこん身のゲキを背中に受けて、馬場の外を風を切るように伸びた。残り1ハロンで完全に抜け出すと、2着に1馬身半差をつけて人馬ともに重賞初制覇のゴールを駆け抜けた。
23年6月の1勝クラス時から手綱を執って今回が13戦目。「僕自身期待していた。重賞を取れるんじゃないかと思っていた」とパートナーをたたえる鞍上は、この日根岸Sを制した横山武と同期で、デビュー9年目での悲願達成だ。「オーナー、調教師、厩舎サイドの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」と、依頼し続けてくれた関係者への思いを真っ先に口にした。吉村調教師も「僕もウルウルした。ずっとあいつ(川又)が調教をつけている馬。うちの調教を手伝ってくれるようになってから7年くらいかな。オーナーにも理解をしてもらっていて。うれしいですね」と見守ってきた人馬の晴れ姿に喜びもひとしおだった。
直前まで単勝1番人気に支持されていたソンシがレース前の馬体検査で競走除外となり、直後にセントメモリーズが発馬機から飛び出して発走が2度遅れた。どこか異様な気配が漂うなか、スタートを五分に決めると「取れた位置がベストポジション」と相棒を信頼。中団7番手で流れに乗って脚をため、直線の破壊力十分の末脚につなげた。
「無事を確認できたら高松宮記念(3月30日、中京)も考えます」と指揮官はG1への挑戦に言及。「ここから先は馬としっかり歩んでいきたい」と川又も気を引き締めた。絆を深めてきたコンビがさらなる大舞台へ。視界の先にはG1初制覇がくっきりと映っている。(山本 理貴)
◆川又 賢治(かわまた・けんじ)1997年11月19日、東京都出身。27歳。17年3月に栗東・森秀行厩舎所属でデビューし、同11日の阪神6R(マテラスカイ)で初勝利。JRA通算2357戦121勝。重賞は過去25度騎乗し、18年小倉2歳Sの5着が最高着順。158・3センチ、44・9キロ。
◆エイシンフェンサー 父ファインニードル、母エーシンパナギア(父エイシンサンディ)。栗東・吉村圭司厩舎所属の牝5歳。北海道新ひだか町・木田牧場の生産。通算19戦6勝。総獲得賞金は1億4623万9000円。重賞初勝利。馬主は(株)栄進堂。