第47回エリザベス女王杯(13日、阪神)に参戦するアンドヴァラナウトが、3度目のG1挑戦を前に不気味な雰囲気を漂わせている。祖母は97年に牝馬17年ぶりの天皇賞・秋制覇を果たし、年度代表馬に選出されたエアグルーヴ。子と孫にもG1馬3頭を輩出した名牝だが、子孫の重賞勝ちは4歳以降が3分の2超を占める。晩成の血統背景に裏打ちされた4歳馬が、12戦目にして初のビッグタイトル獲得に挑む。
経験を積めば積むほど光り輝く。アンドヴァラナウトの祖母、エアグルーヴから広がる血脈は、現下の日本競馬界に一時代を築いている。母系にそのDNAを受け継ぐ重賞ホースは8頭。G1馬もアドマイヤグルーヴ、ドゥラメンテの母子に、種牡馬としても活躍するルーラーシップの3頭がいる。この一族を語るうえで重要なキーワードは「成長力」だ。
この8頭で重賞計19勝を挙げているが、古馬になってからの勝ち星がうち13勝。3歳春までの勝利は圧倒的な能力があったドゥラメンテによる15年の皐月賞、日本ダービーのみだ。エアグルーヴ自身も現役時に挙げた重賞7勝中5勝が古馬になってから。特に4歳だった1997年には天皇賞・秋で17年ぶりとなる牝馬による勝利を挙げ、同じく牝馬として26年ぶりの年度代表馬に輝いた。
アンドヴァラナウトも今年4歳。しかし、キャリアはまだ11戦しかない。「反動が大きくて、体の成長が追いついていなかった」と池添学調教師。焦らず緩やかな成長曲線に合わせてきたためだが、今回は攻めている。過去の追い切りは主に栗東の坂路を使用してきたが、先週2日は負荷のかかりやすいCWコースで、しかも長めの7ハロン追い。馬なりで99秒2―11秒5と鋭い伸び脚でまとめた。
「その後の歩様も硬さはありませんでした。今まで土台はつくっていましたから」。トレーナーが攻め馬強化に踏み切れたのも充実ぶりを感じているからこそだろう。今秋始動戦の府中牝馬Sは前走から14キロ増での出走。勝ち馬から0秒2差の3着と、さらなる上昇を期待させる内容だった。「体が減りやすいので増えていたのはよかった。カイバ食いがすごくいいので、今回も同じぐらいになると思います」。晩成傾向の強い日本屈指の母系が目覚めつつある4歳秋。一撃があっても驚けない。(山本 武志)
◆英トップジョッキー・ムーアと新コンビ
アンドヴァラナウトは、今週から参戦する英国のトップジョッキー、ライアン・ムーア(39)との新コンビで3度目のG1に臨む。昨年も3度目となるロンジンワールドベストジョッキーに選ばれるなど、世界のトップを走り続ける名手。コロナ禍に見舞われる前の19年以来、約3年ぶりに短期免許を取得しての騎乗となる。
JRAではこれまで通算130勝。重賞は16勝しているが、半分の8勝をG1で挙げるなど大舞台での存在感が際立つ。初のJRA重賞制覇は英国馬スノーフェアリーに騎乗した2010年のエリザベス女王杯。翌年も連覇しており、相性のいいレースだ。