今年JRA7勝、地方交流4勝(27日現在)と前年以上のペースで勝ち星を積み重ねる永島まなみ騎手=栗東・高橋康之厩舎=。好調の裏には、姉・みなみさんの存在がある。
昨年11月5日の福島開催から、4歳下のまなみのバレットを担当。平日は鍼灸(しんきゅう)師の仕事をしながら、土日の開催日に鞍の準備や、レース直後の馬具の掃除などを手伝う縁の下の力持ちだ。高校卒業後、「いつか、まなみや家族のサポートが出来るように」と専門学校に3年間通い、難関の国家試験に合格して鍼灸師になった。さぞかし役に立っているのかと思いきや、「私がなりたての頃にまなみに針を打ったんですが、痛かったみたいで…。家族も含めて苦手みたいです」と笑う。
子供の頃はどんな姉妹だったのか。「ケンカももちろん多かったですよ(笑い)。ピアノなど習い事も同じで、ずっと後ろを付いてきてました。ただ、まなみは負けず嫌いでしたね。小学校のマラソン大会で優勝するために、学校が終わったら一人で走っていました。小学5年生から乗馬を始めたと思うんですが、土日も朝早くから頑張って、すごいなと思っていました」
妹を支えるようになって約5か月。一番印象に残っているのが、今年2月19日の阪神4Rをフェリで勝った時だという。パドックから返し馬に向かう際の地下馬道で、まなみが馬に足を蹴られて動けなくなってしまったことを他のバレットから聞いた。「(バレットになって)初めてのアクシデントで、どうしたらいいか分からなかったです。そのうえで勝ったのは衝撃でしたね。周りの方々に『根性あるな』と褒めていただいて、自分のことのようにうれしかったです」と振り返る。
普段から2人で出かけたり、カラオケに行ったりと仲がいい。「女きょうだいだからか、競馬場でも、まなみが食堂で買ってきたおにぎりを半分個します。私が持って行ったパンを半分個したり。気が張ってるので、あまりお昼は食べませんが。まなみが、うまく乗れなかったりしてイライラしていることもありますが、基本的にそっとしておきます。何レースも空く時は、普段通り雑談して笑ってますね。落ち着ける場所であれば」。自身の姉や妹がバレットを担当している男性ジョッキーは複数いるが、メンタルケアもできるのは同性ならではかもしれない。
まなみも「やっぱり姉というのもあって、レースでうまくいかなかった時とかに、あたるではないんですけど、ムッとしてしまったりして(笑い)。気を遣わせてる部分はあるなとすごく思います。ただ、小さい頃から私を見て分かってくれてますし、何でも話せる存在なので」と全幅の信頼を寄せる。慣れない中で一生懸命に働く姉。「最初は、帰りの新幹線で疲れて爆睡してましたね(笑い)。姉には言わないんですけど、ホントいつも感謝しています」と少し照れくさそうに話す。
みなみさん自身は騎手になろうと思ったこともなく、競馬に関しては勉強中だ。「たくさんの方が携わっていることを改めて実感しています。感謝の気持ちを忘れず、2人で頑張っていきたいです。毎年、勝利数が増えたら」。今週も二人三脚で、競馬場に笑顔の花を咲かせる。(中央競馬担当・玉木 宏征)