無敗3冠馬ディープインパクト、天国へ飛ぶ 武豊「人生において本当に特別な馬」

06年の天皇賞・春、最後の直線で、飛ぶような走りでゴールへ向かうディープインパクト
06年の天皇賞・春、最後の直線で、飛ぶような走りでゴールへ向かうディープインパクト

 史上2頭目となる無敗の3冠馬で、種牡馬としてもJRA・G1馬38頭(51勝)を輩出したディープインパクト(牡17歳)が30日、けい養先の社台スタリオンステーション(北海道・安平町)で死んだ。痛みがあった頸(けい)部の手術を28日に受けたが、翌29日午前に起立不能に。30日早朝に頸椎の骨折が判明し、回復の見込みが立たないことから安楽死の処置が取られた。日本競馬界の至宝の死に、大きな衝撃が走った。

 日本の競馬史を塗り替えた名馬が、あまりにも突然にこの世を去った。ディープインパクトは30日午前6時40分、起立不能の状態で頸椎に骨折が判明し、回復の見込みが立たないため安楽死の処置が取られた。けい養先の社台スタリオンステーション事務局の徳武英介氏(57)は「立てなくなってから1日近くたっていたので、これ以上はかわいそうだという獣医師の判断。非常に残念の一言」と、沈痛な面持ちで説明した。

 現役時は武豊が「空を飛んでいる」と例えたほどの圧倒的なスピードで、無敗での牡馬クラシック3冠制覇などG17勝を含む14戦12勝。引退レースの06年有馬記念も3馬身差の圧勝で締めくくり、武豊との最強コンビは「競馬」の枠を超えた社会現象にもなった。

 引退後は名種牡馬サンデーサイレンスの後継種牡馬として大成功を収め、今年の日本ダービー馬ロジャーバローズなど産駒はJRAのG1計51勝。海外G1も制するなど、世界中から高い評価を受けていた。

 しかし、今年の種付けシーズン開始直後の2月18日に突然、首の痛みを訴えたため、その後は治療に専念。痛みの原因である部位が判明したため、海外から専門家を呼んで頸椎を固定する手術を7月28日に受けた。「何とか種付けを復活させたいという要望があり、積極的に治療を行った。日本では初めての手術だったと思うが、95%以上は改善すると言われていた」と徳武氏。手術自体は無事に成功したが、29日の午前に容体が急変する。

 治療先の社台ホースクリニックの馬房で突如、起立不能に陥り、痛めていた箇所とは別の部位の骨折が判明した。徳武氏は「痛みで首が力んだ時に何かあったのか、ほんの一瞬だったと思う。執刀したチームからすると過去に(別の部位を骨折した)症例はない。年も年で骨が弱くなっていたのか」と説明。「馬自身も観念しているところがあって、痛みを通り越して本当に静かにしていた。苦しんでいる感じではなく、寝ている感じでした」と、悲しみをこらえながら名馬の最後の姿をしのんだ。

 今年の種付け頭数は24頭。「海外のお客様が多くて、日本で生まれるのは4、5頭くらいかなと思います」と徳武氏。22年にデビューする2歳馬が最終世代となる。G1馬を続々と送り出してきた日本競馬界の至宝。その損失の大きさは計り知れない。

 武豊騎手「体調がよくないと聞いていたので心配していたのですが、残念です。私の人生において本当に特別な馬でした。彼にはただただ感謝しかありません」

 ノーザンファーム・吉田勝己代表(生産者)「ノーザンファームの過去の生産馬の中でも間違いなく最高の競走馬でした。種牡馬としても大成功をしていただけに本当に残念です。心よりご冥福をお祈りします」

 ◆ディープインパクト 2002年3月25日生まれの鹿毛の牡馬。父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘア(父アルザオ)。通算成績14戦12勝。JRAのG1は、1984年シンボリルドルフ以来の史上2頭目となった無敗でのクラシック3冠制覇を含む7勝(05年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、06年天皇賞・春、宝塚記念、ジャパンC、有馬記念)。07年から北海道安平町の社台スタリオンステーションで種牡馬入り。昨年は産駒がJRAで自己最多の265勝を挙げるなど、12年から7年連続リーディングサイアーに輝く。産駒はJRA重賞を204勝(うちG1・51勝)。

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