◆大阪杯・G1(3月31日、阪神・芝2000メートル、16頭立て=良)
あれほど熱い抱擁は記憶にない。ベラジオオペラ(牡4歳、栗東・上村洋行厩舎、父ロードカナロア)が3着馬まで首、鼻差だった大接戦を制し、G1初勝利を飾った大阪杯の検量室前。ウィナーズサークルへ向かう林田祥来オーナーを祝福すると、強く抱きしめてもらった。「フワフワしていた」。夢見心地で頭が真っ白。勝利後の記憶はほとんどなかったと後日、オーナーから聞いたが、記者は“温度”をはっきりと覚えている。
大阪・淀川区内にある行きつけのすし屋が同じだったことも縁で、快諾してもらったオーナーインタビュー。オペラが23年スプリングSを制し、クラシックロードに乗った際から個人的に「いつかやりたいな」とイメージしていたが、インタビューが実現し、掲載した週のG1を優勝。JRA3頭目の所有馬でビッグタイトルを手にしたオーナーの“強運”に感嘆した一方、安堵(あんど)感もあった。
験を担ぐ人も多い勝負の世界。こういう企画をお願いした際、結果がともなわなければ記者として責任を感じることも多々ある。「オペラが走らなければJRAの馬主をやめようと思っていた」という覚悟も聞いていた。それが、最高のフィナーレを迎えたのだから、個人的にも喜びはひとしおだった。
祝勝会も開催していただき、高級魚のクエ鍋をごちそうしていただいたのもいい思い出。大阪杯後も、G1でコンスタントに上位争いに加わっており、先日の有馬記念は4着。惜しくも年末のグランプリで結果は出なかったが、見せ場もたっぷりで来年への期待を抱かせるレース内容。来年こそ2度目、3度目のビッグタイトルをつかんでくれるはずだ。また、大興奮した林田オーナーと熱い抱擁を交わせる日を楽しみにしている。(中央競馬担当・戸田 和彦)