◆NHKマイルC・G1(5月5日、東京・芝1600メートル、18頭立て=良)
今年から中央競馬担当になった私にとって、G1で初めてヒーロー原稿を書くことになったという点でも忘れられないレースとなったが、ジャンタルマンタルの勝ち方やレース後の関係者の取材も強い印象が残っている。原稿はレース内容や勝因、ここまでの過程など、様々な材料をもとに構成していくが、今年のNHKマイルCは「厳しいレースとなった皐月賞からタイトな日程でも見せたジャンタルマンタルの強さ」が大きなテーマとなった。
皐月賞はメイショウタバルが前半1000メートル57秒5で引っ張るなかをジャスティンミラノが当時のコースレコード1分57秒1で快勝。初めての2000メートルに挑んだジャンタルマンタルは、好位から直線で早めに抜け出してそのまま押し切るかと思われた。ところが道中のハイペースが響き、坂を上ったところで脚が鈍って3着。負けてなお強しの内容だったとともに、見た目通りのタフな競馬となった。
陣営は皐月賞後の選択を悩んだ。中2週のNHKマイルCに向かうか、それとも中5週となる日本ダービーか。結果として日程はタイトになるものの朝日杯FSを制した1600メートルへの参戦を決意。2歳女王アスコリピチェーノとの直接対決になり1番人気こそ譲ったが、蓋をあけてみれば2馬身半差をつける圧勝だった。付け入る隙のない見事な勝ちっぷりだったが、「返し馬でしんどいと感じる部分はあった」と川田将雅騎手。万全の状態であれば、どれだけのパフォーマンスを発揮するのだろうかと、私は驚きをもってインタビューに耳を傾けていた。
レース後は激戦の疲れを癒やすために放牧。秋は復帰予定だった富士Sを発熱で見送り、NHKマイルC以来の実戦となった香港マイルで13着。中間の調整過程や競馬でもスムーズさを欠いたこともあり、本来の力を出せなかったが、順調なら再び強いジャンタルマンタルの走りを見せてくれる日は近いはずだ。多くの名馬と栄光をつかんできた川田騎手がマイルでトップに立てる可能性を感じているだけに、期待を抱かずにはいられない。(中央競馬担当・浅子 祐貴)