◆天皇賞・秋・G1(10月27日、東京・芝2000メートル、15頭立て=良)
おえつ、頭痛、足の震え…。心も体もぐちゃぐちゃになるほど感極まったのが、ドウデュース(牡5歳、栗東・友道康夫厩舎、父ハーツクライ)が勝った天皇賞・秋だ。「ラストシーズンを目に焼き付けたい」。その一心で、休みを取って現地観戦。生涯忘れられないレースになった。
縦長の隊列で後方にいたが、“絶対来る”と不安はなかった。レース前の取材で、武豊騎手が「爆発力はすごくあるから、それを出すだけ」と決意していたからだ。それでも、怒涛のような追い込みには興奮した。見事な直線一気でG1・4勝目。ゴール前から何かを叫んだ気がするが、覚えていない。
私が天皇賞・秋に“イレ込んでいた”のは理由がある。当日付紙面のコラムでも書いたように、ドウデュースが今まで以上にハードな調教をこなしていたからだ。レースの数日前、前川助手から「プールは周回を多めに。CWコースでは時計を速くして負荷を上げている」と聞き、それを検証した。
円形プールの周回数は59で、宝塚記念の31周からほぼ倍増。CWコースで行われた調教のラスト1ハロン平均は13秒6で、昨年の天皇賞・秋以降の6戦で最も速かった。6ハロン、4ハロンで比べても同様。タフの代名詞でもあるドウデュースですら、疲れや筋肉痛が出たという。厳しい調教が報われて、心からうれしかった。
冒頭にも書いたが、7月に今年限りでの引退が発表されてからは「ラストシーズンを目に焼き付けたい」と決めていた。ドバイ・ターフ、宝塚記念の春2戦も含め、天皇賞・秋、ジャパンC、そして出るはずだった有馬記念。全て現地に行くことができた。5戦とも思い出深いが、私のベストレースは天皇賞・秋。ドウデュースが、厳しい日々に耐え抜いた末の勝利だった。(中央競馬担当・水納 愛美)