2026年春に定年を控える国枝調教師にとって、今年の3歳馬は最後のクラシック挑戦となる世代だ。悲願の牡馬クラシック制覇を目指して、史上最多となる芝G1・9勝を挙げたアーモンドアイの初子となるアロンズロッド(牡3歳、父エピファネイア)をはじめ、良血馬がひしめく堂々たるラインアップとなっている。そのなかから“当たり”を探そうと取材を重ねたなかで、初年度から絶好調のサートゥルナーリア産駒のレイニング(牡3歳)をイチ押しという結論に至った。
まだ実績はデビュー1戦1勝に過ぎないが、その昨年11月3日の新馬戦(東京・芝1800メートル)が出色の内容だった。前半1000メートル通過1分4秒2という超スローペースの流れのなか、中団後方に構えて、道中は新馬らしくフワフワとした走り。直線でヨーイドンの展開となり、直線で大外に持ち出すとみるみる加速。レース全体の上がり3ハロン(33秒5)を0秒6も上回る32秒9の瞬発力を発揮して、大物感を感じさせた。
レースぶりについて国枝調教師は「コントロールが利いていて、(3歳勢のなかで)競馬の立ち回りは一番いい。圭太(戸崎騎手)が“スモール・ドウデュース”と言ったとか」と高く評価。いくらか“リップサービス”があったとは思うが、鞍上が鋭い決め手で数々のG1を制した名馬の名を引き合いに出すほどだったというのは興味深い。その秘める素質の高さは、厩舎スタッフも感じている。
国枝厩舎を開業当初から支えてきた番頭格の鈴木助手は、「デビューに向けて入厩して来て、最初はケイコで動かなかったけど、ガラッと変わってきたね。(ゴーサインを出して)体がグンと沈むし、乗っている人よりも見てる人が感じるくらいだからね。これからどんどん変わってくると思うよ」と、素材の良さを証言する。新馬戦に向けた2週前追い切りでも美浦・Wコースで5ハロン66秒3―10秒8をマークしており、その切れ味を物語る数字に偽りはなかった。
母クルミナルはデビュー2連勝でエルフィンSを制して、15年の桜花賞2着、オークス3着に好走した実績馬だった。祖母クルソラはアルゼンチンのG1馬と筋が通った良血も大きな魅力だ。国枝師は「この前の競馬からしても距離の融通は大丈夫かなと思うし、そこはチャレンジしていかなと」ときっぱり。現在は放牧先の福島・ノーザンファーム天栄でじっくりと調整しているが、順調にいけばクラシック路線を目指せる器と信じる。(中央競馬担当・坂本 達洋)