◆第145回中山大障害・JG1(12月24日、中山競馬場・芝4100メートル)
第145回中山大障害・JG1が24日、中山競馬場で行われ、障害絶対王者として一時代を築いたオジュウチョウサン(石神)は6着に敗れ、1番人気に支持されたラストランを飾れなかった。最終レース終了後に引退式が行われ、多くのファンが別れを惜しんだ。レースは平地重賞Vの実績を持つ5番人気のニシノデイジー(五十嵐)が、障害転向4戦目でJG1初制覇を果たした。
夕闇に包まれても、別れを惜しむ1万5000人のファンがスタンドを埋め尽くしていた。オジュウチョウサンがターフに姿を現すと、拍手とシャッター音、そして最後の雄姿を目に焼き付けようと熱い視線が注がれた。長らく主戦騎手を務めてきた石神は「やっぱり悔しい気持ちはありますけど、何より無事にゴールしてくれたのが一番うれしかった。最高のパートナーでした」と、セレモニーで万感の気持ちをかみ締めた。
有終の美を目指したラストランは、好位5番手で前半は息の合った走りを見せた。だが大竹柵の飛越で完歩が合わず、着地でつまずくミス。最後の直線の入り口で3番手まで進出して闘志を見せたが、そこで力尽きて6着に終わった。「(現状の)力は出し切れたと思う。でも乗っていて思ったのが、心肺機能が…」と石神。全盛期なら多少の飛越ミスがあっても勝ち切れたが、11歳と年齢を重ねたことによる衰えには逆らえなかった。
波乱万丈の現役生活だった。16年春の中山グランドJから18年春まで障害重賞9連勝と圧倒的な強さを誇った。同年7月からは平地との“二刀流”に挑戦して、その年の暮れの有馬記念(9着)出走を果たした。長山尚義オーナーは「ファンの方に本当に感謝。世界の武(豊)さんがこの馬を選んでくれたことも感謝です」と、激闘譜を思い起こしてマイクを握る手に力が入った。
現役晩年も中山の大一番で復活劇を演じて、勇気や感動を与えてきた。担当の長沼昭利厩務員は「着順よりも元気に戻ってきてくれたのが一番。別れたくない」と、涙で声を詰まらせた。史上最多となるJG1・9勝という“V9”は永久に不滅だ。(坂本 達洋)
オジュウチョウサン 父ステイゴールド、母シャドウシルエット(父シンボリクリスエス)。美浦・和田正一郎厩舎所属の牡11歳。北海道平取町・坂東牧場の生産。通算40戦20勝(うち障害32戦18勝)。総獲得賞金9億4137万7000円(うち障害9億1545万7000円)。J・G1は中山グランドジャンプ6勝、中山大障害3勝。馬主名義は(株)チョウサン。
○…引退後のオジュウチョウサンは、種牡馬入りすることが決まっている。当面は生まれ故郷の北海道・平取町の坂東牧場にけい養されるが、受け入れてくれる種馬場を探しているという。長山オーナーは「私はオジュウの血を残したい。その一心です」と語り、初年度の種付け料は100万円を予定している。今後は美浦トレセンから千葉・和田牧場に移動して疲れを取り、年明け1月10日頃に坂東牧場へ向かう。