◆ドバイ・ワールドカップ・G1(3月25日、メイダン競馬場・ダート2000メートル)
【ドバイ(UAE)25日=ペン・松末 守司、カメラ・高橋 由二】野球の次は競馬が世界一だ! ドバイワールドカップデー(25日、メイダン)に出走した日本馬が、侍ジャパンのWBC優勝にも劣らぬ快挙を成し遂げた。ウシュバテソーロは一気の差し脚でワールドC・G1を制し、凱旋門賞・G1(10月1日、パリロンシャン競馬場)挑戦を表明した。
中東に再び衝撃が走った。初の海外挑戦だったウシュバテソーロが5連勝で、オールウェザーだった11年のヴィクトワールピサ以来12年ぶり、ダートでは日本馬としては初となる世界の頂点に立ち、約9億円を手にした。サウジCでパンサラッサが約13億円を手にした約1か月後に再度、日本馬が歴史をつくり、どよめきが起こる場内に、殊勲の川田は「ありがとう、ドバイ。日本のみなさま応援ありがとうございました」と感謝の言葉をとどろかせた。
世界でも鞍上の手腕が光った。パンサラッサがリモースに競り込まれでき上がった速い流れの中、道中は最後方に構えた。リズムを重視していたが、抜群の手応えで早めに前に進出を開始すると、勝負どころでは迷わず外に出した。直線はもう伸びるだけ。他馬とは次元の違う末脚を爆発させて大外からぶっこ抜いた。
先行馬が結果を出してきた同レースで、4角後方から差し切り勝ち。世界を震撼(しんかん)させる圧倒的な存在感だった。川田は「日本馬が8頭チャレンジする中で、日本人騎手として騎乗しているのが吉田豊さんと僕の2人だけでした。テソーロが頑張ってくれたおかげで、こういう素晴らしい世界一のレースを勝つことができて、日本の騎手も世界レベルであるということも、改めて馬とともに示すことができて誇りに思っています」。会心の笑顔でトロフィーを掲げた。
海外レースで、日本馬の鞍上が外国人騎手に乗り替わってきた過去はもう昔の話。川田はブリーダーズC(フィリー&メアターフ)をラヴズオンリーユーで勝利にしたのに続いて世界最高峰のレースを制覇。驚くべき勝ち方を見せた馬とともに、騎手もまた世界レベルに到達していることを十分に証明してみせた。
約1年前の昨年4月はダートに転向し、まだ3勝クラスにいたオルフェーヴル産駒。夏場を休養に充て10月から破竹の5連勝で東京大賞典、川崎記念、そしてドバイ・ワールドCまで一気に駆け上がった。だが、ビッグドリームにはまだ続きがある。勝利を会場で見届けた了徳寺健二ホールディングスの広瀬祥吾副社長は「本当に皆が一丸になって戦って取った勝利だと思います。これを勝てば凱旋門賞に挑戦したいと思っていましたが、これで挑戦したいと思います」と高らかに宣言。日本馬がまだ到達していない次元まで上り詰める。
◆ウシュバテソーロ 父オルフェーヴル、母ミルフィアタッチ(父キングカメハメハ)。美浦・高木登厩舎所属の牡6歳。北海道新ひだか町・千代田牧場の生産。通算29戦9勝(うち地方2戦2勝、海外1戦1勝)。主な勝ち鞍は川崎記念・G1(23年)、東京大賞典・G1(22年)。馬主は了徳寺健二ホールディングス(株)。